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現在アトピー性皮膚炎の治療は、湿疹に対するステロイド外用薬・免疫抑制外用薬などの外用療法、痒みに対する抗アレルギー薬などの内服療法、およびスキンケアが主体である。一方、本症に対する治療の1つとして、種々の漢方方剤の臨床的有用性が認められているが、その臨床効果に対するエビデンスの科学的・客観的評価は十分になされていない。今回、本症患者のQOL向上を目指し、アトピー性皮膚炎に有効な治療の選択肢を増やすため、本症に対する漢方療法の有用性に関してEBMによる観点から評価した。評価対象として採用した論文は海外論文6編および国内論文14編であった。一般に質の高いエビデンスとされるランダム化比較試験
(randomized controlled trial: RCT) による検討の報告は少なく (5編)、主体は症例集積研究であった。各報告の症例数も100例以上のものは認められず、また漢方薬単独投与の試験は極めて少数であった。エビデンスのレベルは1bが2編、2bが3編および4が15編であった。以上の結果より、アトピー性皮膚炎に対する漢方療法の再評価には、
RTC をはじめとするより質の高い臨床研究が今後さらに必要であることが示唆された。一方で、漢方治療の特殊性を考慮し、漢方独自の新しい評価方法を用いた試験の導入も試みられるべきであると思われる。 |
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