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小児期の食物アレルギーの発症は乳児期が最も多く、ほとんどのケースでは皮膚症状を合併している。一方、井口らによれば、乳児期のアトピー性皮膚炎の70%に食物アレルギーが関与しており、乳児アトピー性皮膚炎と食物アレルギーに密接な関連があると考えられる。さらに近年、皮膚科医と小児科医において、「食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎」というべき病型が存在するとの合意に至った。このように少なくとも乳児においては、食物アレルゲンが関与するアトピー性皮膚炎症例があることは明らかであるが、成人を含む乳児以上の年齢のアトピー性皮膚炎における食物アレルギーの関与は明らかとは言えない。一方、アトピー性皮膚炎が本来の皮膚バリアーの異常と食物以外の多くの環境要因の影響を受ける疾患であること、ステロイド外用剤のみで皮膚炎は著明に改善することから、アレルゲン除去食による治療効果の評価は困難な場合が多く、現在でも論議の多い所である。にもかかわらず、乳幼児アトピー性皮膚炎の治療として経験的な食物アレルゲン除去療法は広く行われており、症例によっては不必要、不適切な除去により栄養障害に陥るような症例も報告されている。したがって、栄養学的な観点から小児に対する食物除去は慎重に行われるべきであり、食物アレルゲン除去療法のアトピー性皮膚炎治療に対するエビデンスを十分検討すべきである。昨今では、アトピー性皮膚炎および食物アレルギーの病態の免疫学的理解が進展したことから、アトピー性皮膚炎治療を目的として食物除去あるいは制限のみならず微生物製剤などの使用も試みられているが、この効果についてのエビデンスは依然確立されていない。一方、アトピー性皮膚炎発症予防という観点からも、食物除去療法あるいは微生物製剤の使用などが試みられるようになっており、これに関するエビデンスも評価されるべきである。
そこで今回の検討では、1)既存のアトピー性皮膚炎に対する食事療法、および2)アトピー性皮膚炎発症予防を目的とした食事療法、の二項目に分け、各治療法のエビデンスの評価を行った。 |
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