アトピー性皮膚炎と向き合うために | 患者の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

4. アトピー性皮膚炎と向き合う為に

1. 皮膚の症状をどう受け入れるか

アトピー性皮膚炎は皮膚の症状があるため、他人と比べて、皮膚の状態に劣等感を抱く事があります。首の周辺など、症状が重かった部分が黒く変色することがあります。また、そんな皮膚にアトピーの症状が重なると、黒いような赤いような色が混じって、ますますひどい状態に見えてしまいます。
しかし周りを見渡し視野を広げると同じ様な悩みを抱えている患者さんも多い事が分かります。自分だけ肌が汚い、何で自分だけがと一人で抱え込まないで下さい。皮膚が黒い、赤いだけで人の価値が決まるものではありません。外見にいろいろな特徴のある人でも素晴らしい人がいることを知ることが大切です。そのためには外に出て、いろいろな人と交流することでそれを実感することが必要です。また患者会など同じ悩みを抱えるもの同士で共有する事で気持ちが軽くなります。

人がどう思うかばかりを気にしていて、自分の人生を台無しにしたらもったいないことです。実際、ほかの人は自分のことをそんなに見ていないものです。人の顔がどうなっているかを見ながら歩いている人はいません。「そんなに見たいならどうぞ」くらいの気持ちで受け流してしまう神経の図太さを持つこともよいですね。
汚さを嘆くなどアトピー性皮膚炎のことばかりにとらわれず、自分の出来る事や能力を発揮できる場所を探したり、自分が熱中できる何かを見つけ、それに取り組むことが大切です。

2. 痒みの考え方

アトピー性皮膚炎のつらさのひとつの痒みですが掻いてはいけないと思うと余計にストレスが溜まり、気持ちが落ち込むものです。かゆい場合、皮膚へのダメージを最小限に抑えるために、常に爪を短くしておけば傷がつきにくいですし、爪を立てずに掻くなど工夫して、ストレスをためないほうがよいと思います。炎症がとれればかゆみもなくなるし、良くなった皮膚は多少掻いても悪化しないものです。多少は掻いてしまっても「また薬を塗って治せばいいさ」と多少の割り切りも大切です。
掻いてはいけないと医師からも言われ、それでも掻いてしまう自分を責めたり、自己嫌悪に陥る人がいます。治療をしていけばかゆみはなくなっていきます。掻いてしまう自分を責めないでください。かゆみ対策をやってみましょう。貴方だけではなく、アトピー性皮膚炎を持つ患者は貴方と同じ様なジレンマや悩みを抱えながら日常を過ごしているのです。

画像

3. ひきこもりになっている人へ

アトピー性皮膚炎があることで、皮膚の状態を恥ずかしく思ったり、人から皮膚のことを言われて傷つき、外へ出られなくなっている人もいます。
そのような経験をした方が心情や気持ちをこのように語ってくれました。

外に出ることは、食事、花粉、発汗などによるアレルギー悪化の原因を増加させるだけであったため、できる限り家に引きこもって生活していることのほうが楽でした。しかし、楽であっても、それは決して充実ではなく、何のために自分は生きているのか、何の目的も持たずに、だらだらテレビゲームをして時間をつぶしている自分の存在は何なんだろうなどと考えていました。
また人と会う事が怖かったり、億劫になっていました。会ったとしても何を話してよいか分からない自分に自信が持てないこともあり、このままではいけないと思いつつも人が怖いということが先に立ち、家から出ることができませんでした。

このように家にひきこもり、一日中寝ていて家族とも話さなくなってうつ状態になる人もいます。精神科にも皮膚科にも行くことができず、症状の改善が見られません。
しかし、このような状態を様々なきっかけで乗り越えて普通の生活に戻ってきた人もたくさんいます。精神科や皮膚科を受診して適切な治療を受け、生活のリズムを取り戻すことで少しずつ家から出て散歩をしたり、家族や友人と話すことができたりするうちに就職活動を始めて希望の仕事に就いた人もいます。
いまからでも遅くはありません、勇気を出して一歩ずつ前に向かって歩き出してみましょう。
家族や多くの支えがあることを知り、新しい希望の光が見えてくることと思います。

画像

4. アトピー性皮膚炎を良くしていくために

【悪循環】

過度のストレスや周囲の環境(乾燥・高温)かゆみが増幅し掻いてしまう新たな傷や、傷口が悪化する皮膚の状態が更に悪化気分が落ち込み、更にストレスが増える

【好循環を回す】

傷口や皮膚がかゆくなってきたステロイド薬を使用かゆみを抑える傷口が修復する肌の状態が改善する傷口の痛みや皮膚に対する気持ちが前向きになる今まで出来なかった事も出来るようになるストレスが軽減する

5. アトピー性皮膚炎を持った人の生き方・気づき 先輩からのメッセージ

アトピー性皮膚炎の完治を人生の目標のように思っている方もいますが、治療するために生きているのではなく、より良く生きる為に治療をするものだと思います。

受験・就職・子育てなど人生のライフイベントで症状が悪化する事がありますが、ストレスで悪化する事は仕方の無い事であり慌てないで受け止めて下さい。

今やっている治療で、治らない・手詰まり感があれば思い切って医者を変えてみるのもひとつの方法です。治療や生活の環境を変える事で、違った変化が起こる。自分にとって何が良いのか悪いのかが分かると思います。

アトピー性皮膚炎は自分で前向きな気持ちを持って積極的に治療していけば治る病気です。どうせ治らないからとあきらめたら誰も治してはくれません。

周りの人へ自分がアトピー性皮膚炎であることを伝え、できないことがあることを理解してもらうと安心して人と交流することができます。アトピー性皮膚炎があることを隠そうとすればするほど自分がつらくなります。隠していても見えてしまうので、言ってしまったほうがお互いに気持ちが楽になります。

ダニが増える時期に布団の丸洗いをする、短時間で薬を塗る方法を編み出すなど日常生活の中で、どうしたら自分が快適に過ごせるかを工夫することが大切です。アトピー性皮膚炎があっても毎日を快適に過ごすことができるのです。

アトピー性皮膚炎があるからこそ、他人の辛さや痛みがわかるようになったり、普通に接してくれる人がありがたく感じたりするものです。それがわからない人も世の中にはいますので、自分の外見をとやかく言う人に対しては気にしないようにして、相手にしないのがよいです。

アトピー性皮膚炎は皮膚症状であることから、他人の目を気にして他人との交流に対して否定的になりやすい傾向があります。人付き合いやコミュニケーションがとりにくいということがありますが、いつまでもネガティブに考えていても何も変わらないということもあり、よい意味で開き直ることも大切です。自身がアトピー性皮膚炎であることを明かし、それを受け入れてくれる人を見つけるしか道はないと思います。もし、そういう人を見つけられたら、コミュニケーションの喜びを実感できると思います。

アトピー症状がある上で社会の中で人と関わっていこうとすると、いつ自分の症状の事を言われるか、いつも不安でいっぱいになります。アトピー症状の事を他人から指摘されるのは不快だし、傷つきます。しかし人間を総合的に見た場合、人生に何の問題も抱えていない人はいないはずです。アトピー性皮膚炎はたまたま目につきやすいだけです。他人の言動にいちいち振り回されるのは不愉快なので、まずは自分の価値観やアトピー性皮膚炎を超えた所での自分の在り方を考えて、それを固めるべきだと思います。すると他人の言動にいちいち左右されなくて済みます。それに他人はアトピー性皮膚炎があってもなくてもその人となりを見て付き合っていくので、症状にとらわれなくても案外平気です。アトピー性皮膚炎の前に人格ありきです。

自分を否定せず、自分の好きなこと、得意なことに打ち込み、自分の可能性や良い所を見つけることで、自分に自信をつけることが大切です。皮膚だけが自分ではなく、どんな考えの人なのか、どんなことが出来る人なのかが大切であることに気づくと思います。皮膚の劣等感から暗くなっているより、皮膚が汚くても明るい人、前向きな人は一緒にいて楽しいと思われるようになり、多くの人と交流できるようになるでしょう。

あれができない、これもできないとできないことを数えて嘆いていても前には進まないものです。人と比べることなく自分の好きな事を見つけたり、視野を広げて別のものに目を向けるなどして、自分らしく生きることを目標にしてみると新しい世界が開かれてくると思います。

画像

PAGE TOP