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膿痂疹は一般に夏季に多くみられ、特に子供に多い皮膚の一般細菌感染症である。本邦における正確な疫学的データはないが、海外では4歳までの子供の年間発症率は2.8%で、5-15歳までの年間発症率は1.6%であるという報告や1)、年間1000人の小児におよそ20回という発症率であるという報告がある2, 3)。
アトピー性皮膚炎患者に合併する膿痂疹の患者数は近年増加傾向にあり、その背景には表皮バリア機能の障害と局所の免疫不全状態が関連していると思われる。
膿痂疹はほとんど全身的な影響は及ぼさないが、溶連菌感染後糸球体腎炎を引き起こすこともあり、注意深い観察が必要である。
膿痂疹は原発性のものと、湿疹や疥癬などに続発するものがあり、その臨床病型には水疱型と非水疱型の2つの型がある。一般的な気候では、非水疱型の原因菌はStaphylococcus aureusである。しかしながら、高温多湿の気候では、Streptococcus pyogenesやその両者が原因菌として分離され4, 5)、顔面や四肢といった露出部に多い。一方水疱型は、ほとんどの場合水疱は3cm未満で、その原因菌はS.aureusである6, 7)。ほとんどが顔面、臀部、体幹そして会陰部に見られる。
膿痂疹の治療に関してはまだ確実なものはない。経口のflucloxacillin、erythromycin、penicillinそしてcephalosporinsから外用のfusidic acid、mupirocin、neomycinそしてbacitracinまで広い範囲に及んでいる8, 9, 10, 11)。本邦ではmupirocinは鼻腔内のMRSAにしか保険適応が認められていない。
またそれ以外の治療としては外用抗真菌剤12, 13)、消毒洗浄14)そしてお茶を含んだ局所治療の報告もある15)。
膿痂疹の診断は臨床判断に基づいており、皮膚細菌培養の結果に基づいて治療法を決定することはほとんどない。また皮膚細菌培養はその細菌が本当に感染しているのかそれともコロニー形成しているに過ぎないのかの信頼性はない16)。したがって膿痂疹の臨床所見に基づいたエビデンスが細菌学的検査の結果に基づいたエビデンスよりも重要である。 |
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