アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
シクロスポリン内服療法
竹原和彦1)、越後岳士2)
1)金沢大学大学院医学系研究科皮膚科、2)金沢大学医学部附属病院皮膚科
要旨 はじめに 研究目的 研究方法 結果 考察 参考文献
シクロスポリン内服療法評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方

はじめに
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ。その病態は未だ完全には明らかにはされていないが、バリアー機能異常や非特異的刺激反応およびヘルパーT細胞の機能異常を含めた免疫調節障害など種々の要因が複雑に絡まり合う多因子性疾患であると考えられている。
そのためアトピー性皮膚炎の治療は多種多様であり、治療するにあたりそれぞれの患者の病態や重症度、さらには身体的、環境的、社会的背景に応じて最も適切な治療法を選択することが重要となってくる。しかし、従来の一般的治療(ステロイド外用剤、保湿剤、抗アレルギー剤など)によるコントロールがつかない重症アトピー性皮膚炎患者や、最近の風潮としてのステロイド外用剤を使用することの困難な患者に対し、ステロイドを代替しうる十分な効果をもつ薬剤として免疫抑制剤があげられる。
シクロスポリンは1970年、Trichoderma RifaiCykindrocarpon lucidumという2種類の真菌の代謝産物から 単離されたアミノ酸11残基からなる疎水性の環状ペプチドである。抗原刺激で活性化されたヘルパーT細胞に特異的に作用するため、 マクロファージによる抗原提示とIL-1により刺激を受けたT細胞がT細胞受容体からIL-2,3,4,5やIFN-γなど誘導性 サイトカインを産生する際、それを転写レベルで抑制するように働いていると考えられている。従来の製剤(サンディミュン®)では、 生物学的利用率が約30%と低く、又、油性製剤であるため消化管内における胆汁分泌量の差により個体内および個体間において吸収に 大きなばらつきがみられ、臨床使用上の問題とされていた。
そこで、シクロスポリンの消化管からの吸収のばらつきを小さくし、AUCとトラフ値との相関性を向上させ、薬物治療モニタリングの 精度を確保することを目的にマイクロエマルジョン前濃縮製剤であるMEPC製剤(ネオーラル®)が開発された。本剤は 従来移植免疫抑制薬であるが、わが国の皮膚科領域ではすでに乾癬およびベーチェット病に保険適応が認められている。 アトピー性皮膚炎患者に対しては、海外では重症・難治性の症例に対して使用され効果を上げており、2003年12月現在、 世界60ヶ国以上で承認されている。本邦においても第2相試験が終了し、ネオーラル® 3mg/kg/日(1日2回に分割)を8週間経口投与の間歇療法を基本プランとして現在第3相試験が行われている。

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