アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
環境アレルゲン
研究協力者 秋山一男 国立病院機構相模原病院院長
研究協力者 中澤卓也 国立病院機構相模原病院臨床研究センター室長
要旨 はじめに 研究目的 研究方法 研究結果 考察 参考文献
環境アレルゲン評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
研究結果
I) 文献検索の結果
A) PubMed
"Atopic dermatitis" OR "Atopic eczema"では15138報、immunotherapy OR "allergen avoidance"では19294報の文献がヒットした。更にこれらが共通する文献を調査したところ632件の文献が抽出でき、この中から人に関係する文献の中で、臨床研究又はRCTであるもので、1991/1/1 より 2003/12/31 に出版された物は30件、2003/1/1 より 2009/9/31 に出版された物は23報であった。更にこの文献から、英語以外の言語で書かれている文献、日本にはコピーが存在しない文献、他のクライテリアに当てはまる文献を除き、1991-2003年では10報、2004-2009年では6報の文献を選択した。更に前回我々が抽出した文献のうち2つの文献がヒットしなかったが、重要と考えて報告中に加えることとした。(文献番号5,9)
B)医学中央雑誌
始めにデーターベースを1991-2003年に設定した。
アトピー性皮膚炎をキーワードとして検索したところ10,003報ヒットし、免疫療法では23,630、減感作療法では1072報、アレルゲンの回避では4報、免疫療法 or 減感作療法 or アレルゲン回避では23,671報 、これとアトピー性皮膚炎を組み合わせた物から126報の文献を抽出した。さらに絞り込みを行い、症例報告を除き、原著論文とし、ランダム化比較試験又は準ランダム化したヒトの文献に絞ると、全く文献が無くなってしまった。
そこで、前述の126報の論文より症例報告以外の原著論文でヒトを扱っているものに絞ると12報の論文が抽出できた。この中でクライテリアの違う食物アレルギー等の文献を除き1報の文献を抽出した。
次にデーターベースを2004-2009年に設定し同様に検索をした。
アトピー性皮膚炎では6,519報、免疫療法では12,971報、減感作療法では771報、アレルゲン回避では8報、免疫療法 or 減感作療法 or アレルゲン回避では13,008報これとアトピー性皮膚炎を組み合わせた物では120報が抽出された。同様にヒトのランダム化比較試験、又は準ランダム化比較試験で抽出出来る文献は無かったので、上記の120報の中からヒトに関する原著論文で症例報告以外の物を12報抽出できた。この中でクライテリアの違う物を除き、最終的には2報の文献を選択した。しかし医学中央雑誌はData base化された年で分類されており、この2文献は雑誌の掲載年が2003年のであったため、2003年のData baseに含めることとした。
PubMedの文献と医学中央雑誌の文献とを合計し評価すべき文献は1991-2003年では14報、2004-2009(9/31)まででは6報であった。PubMedと医学中央雑誌両方に掲載された文献もあったが、それも含め全部で20報となった。
II) 文献内容の評価
A)Data base 1991-2003年
対象となる文献合計14報の中でアレルゲン除去療法が8報(文献番号3-7, 9,10,12)、免疫療法に関する文献が6報(文献番号1,2,8,11,13,14)であった。
アレルゲン除去療法の文献8報の内訳は、RCTが6報(文献番号3,4,5,7,9,10)、非RCTが2報(文献番号6,12)で、すべて同時対照、前向き試験であった。対象症例総数は、文献4のみが総数1000例を超えているのみでその他の症例は100例以下と比較的少数だった。文献4は、アレルギー疾患を有する妊婦とその出生児を対象とした大規模試験であるPIAMA-studyの2年目までの報告である。試験期間はクリーンルームの効果を検討した文献12の3〜4週間から文献4の2年以上にわたる試験まであった。主要評価項目(primary outcome)は臨床皮膚スコア、SCORAD index、等の重症度による臨床評価であり、副次的評価項目(secondary outcome)として環境中のダニ抗原量測定及び抗ダニIgE抗体価を用いていた。検索し得た8論文のエビデンスのレベルは1が4論文(文献番号3,4,5,7,)、2が4論文(文献番号6,9,10,12,)であった。最終的に環境アレルゲン除去療法の効果については、有効が5論文、無効が3論文であるが、エビデンスの質が1の論文は3/4が無効と結論していた。
減感作療法については、合計6論文を評価した。エビデンスレベル1の文献2論文(文献11、14)、その他はレベル4と5であった。アトピー性皮膚炎に対する免疫療法の成果を有効としたのは症例集積研究を行ったエビデンスの質が4と5のものだけであり、エビデンスの質1の論文の2つはいずれも無効と判定していた。その投与経路は経口と経皮が1報ずつであった。

B)Data base 2004-2009年
対象となる文献合計6報の中でアレルゲン除去療法が2報(文献番号17,19)、免疫療法に関する文献が4報(文献番号15,16,18,20)であった。
除去療法の論文においていずれもRCTであり同時対照前向きの出生Cohort研究であった。その期間の長さは、文献17において8年であり文献19において4年であった。対象人数は17が120人、19が1327人の大規模Studyであり評価項目はいずれもアトピー性皮膚炎の発生率であった。いずれもエビデンスレベル1の文献であった。結果は文献17が有効、文献19は無効という結論になっていた。
次に免疫療法関係の文献について評価した。
RCTは2報(文献16, 20)、非RCTは2報(文献15,18,)RCTに関しては同時対象、前向きの試験であり、対象人数は文献16が56人、文献20が89人であった。観察期間はそれぞれ18ヶ月と12ヶ月であった。投与方法は舌下投与と皮下投与であったが、エビデンスのレベルでは両論文ともレベル1であり結果は2つともにアトピー性皮膚炎に免疫療法が有効であったという結果であった。非RCTの対象人数は20人と86人であった。
いずれも対象がないCohort試験であったのでエビデンスのレベルではいずれもレベル4であったが2論文とも免疫療法がアトピー性皮膚炎に対して有効であるという結論に達していた。

以上1991年以降2009年までの文献検索を総合し評価してみると、アレルゲン除去療法に関する論文は全体で10報。RCTが8報、非RCTが2報であった。RCTのうちエビデンスレベル1の論文が6報、エビデンスレベル2の論文が2報であり、アレルゲン除去療法で有効であると結論づけている論文はレベル1の論文の中で2/6報、レベル2の論文の2/2報であった。
次に免疫療法の論文は10報であり、RCTが4報、非RCTが6報であった。RCTの論文のエビデンスはすべてレベル1であった。このうち免疫療法がアトピー性皮膚炎に有効とする論文は2/4報であったが、それらは2004年以降の論文であった。投与経路ごとでは経口投与1,皮下投与2,舌下投与1であり経口投与は効果なく、皮下投与は効果有りが1報、無しが1報、舌下は有効であるとの報告が1報であった。

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