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紫外線療法
高森建二、松葉祥一
*順天堂大学医学部附属浦安病院皮膚科
要旨 はじめに 研究目的 研究方法 研究結果 考察 結論 参考文献
紫外線療法評価一覧
評価表の見方
評価法の見方
研究結果
上記検索式によるMEDLINE検索にて50編の論文が検出された。これらのなかから有用な文献について報告する。
紫外線療法はステロイド外用薬を含む第1選択治療が無効な症例ないしはこれらの治療に対して抵抗を示す症例に用いられ、その有用性が認められている。しかし、その報告のほとんどが対照群さえないオープン試験であり、ランダム化比較試験(randomized controlled trial, RCT)が行われていないためにEBMの対象とはなりにくい。ここでは、PUVA療法、UVA1療法、Narrowband UVB療法など紫外線療法全般についてその方法と結果についてまとめる。
1.有益性
1)PUVA 療法
PUVA療法単独ではオープン試験のみでランダム化比較試験は行われておらずEBMによる有効性評価に耐えうる報告は今日まで認められない。Morisonら1)は体表面の50%以上が侵されている重症アトピー性皮膚炎患者に、内服PUVA療法と紫外線B(UVB)療法、無治療のbilateral comparison studyを行った。その結果、PUVA療法はUVB照射より優れていることを示した。Jeklerら2)は、UVB療法は体表面積の平均13%が侵されている中等症のアトピー性皮膚炎患者には有効であるが、広範囲に侵されている重症のアトピー性皮膚炎患者には有効でないこと、PUVA療法は重症の患者にも有効であることをpaired comparison studyにて示した。Yosiikeら3)は従来の治療法に反応しない重症アトピー性皮膚炎患者を入院(48人)と外来(66人)に分け、外用PUVA療法の有効性を検討し、連日外用PUVA療法はステロイドの外用を併用しなくても81%で著効が得られ、平均6.4ヶ月の寛解期間が認められたと報告している。アトピー性皮膚炎に対してPUVA療法が有効であることから、彼らはPUVA療法のガイドラインを作成し、絶対的適応として他の治療に充分に反応しない患者、他の治療により副作用の発現している患者、相対的適応として重症であること、年齢が13歳以上、他の治療を受けたくない患者としている。英国光皮膚科学グループ4)のPUVA療法ガイドラインによる効果的な方法は、初期のUVA照射量を最小光毒照射量(MPD)の70%とし、週2回、20%ずつ増加してゆく。MPDが測定されない場合には始めに1J/cm2、続いて週に2回0.5-2.0J/cm2ずつ増加してゆく。皮疹消退後はUVA照射量、回数を徐々に漸減していく。Der-Petrossianら5)は慢性重症のアトピー性皮膚炎患者12人に対しbath-PUVA療法とNarrow-band UVB療法のrandomized investigator-blinded half-side comparison studyを行い、6週間、週3回照射により、SCORAD scoreがbath-PUVA療法で65.7%の、Narrow-band UVB療法で64.1%の改善が得られ、両者とも等しく有効であったとしている(P=0.48)。
2)UVB療法
Narrow-band UVB療法はオープン試験の結果ではアトピー性皮膚炎を改善する可能性がある。Raynolds NJら6)は中等度から重症のアトピー性皮膚炎患者に対してNarrow-band UVB(26人)、UVA(24人)、visible light(23人)の照射効果を比較するためにrandomized control trialを行った。その結果、Narrow-band UVB療法はUVA療法より効果があり、中等度から重症のアトピー性皮膚炎の有効な治療法であると結論している。
3)UVA1療法
UVAは長波長側のUVA1(340-400nm)と短波長側のUVA2(320-340nm)に分けられる。Krutmannら7)は高照射量 UVA1とステロイド外用、UVA/UVB混合照射の効果をmulticenter trialにて比較検討し、high dose UVA1は急性増悪した皮疹に対してステロイド外用薬と同等の効果を示し、UVA/UVB療法よりも有意(P<0.0001)に効果があることを示した。Dittmarら8)はUVA1療法の照射量の検討をrandomized、controlled、prospective pilot studyで行った。その結果、増悪したアトピー性皮膚炎には高照射量(max. single dose of 130J/ cm2、max. cumulative dose 1840J/cm2)と中等度照射量(max. single dose of 65J/cm2、max. cumulative dose 975J/cm2)が有効であること、低照射量(max. single dose of 20J/cm2、max. cumulative dose 300J/cm2)では効果がないことを報告した。Tzaneva ら9)は重症アトピー性皮膚炎患者のUVA1療法の有効な照射量(high dose、medium dose)をinvestigator-blineded、bilateral comparison studyにて検討した。その結果、中等度照射量UVA1療法は高照射量UVA1療法と同等に有効であることが示された。
2.有害性
紫外線療法、中でもPUVA療法の副作用は急性(光毒性急性皮膚症、色素沈着)と慢性(慢性光線性皮膚変性、白内障、発癌)に大別される。しかし、重要な副作用は発癌の問題である。
MEDLINEにてKey wordをultravioletとrisk of skin cancerの組み合わせで検索すると242件、PUVAとrisk of skin cancerでは112件、ultraviolet、cancer、atopic dermatitisでは23件、PUVA、cancer、atopic dermatitisでは17件が抽出された。これらの中から有用な文献を拾い出して報告する。PUVA療法は皮膚癌、特に有棘細胞癌、メラノーマのリスクとなる。アトピー性皮膚炎患者のPUVA療法においても有棘細胞癌の多発例の発生を見ている10)。有棘細胞癌の発癌リスクが照射回数と用量に依存することから、British Photodermatology Group4)はPUVA療法は回数200回以下、総照射量は一生に1000J/cm2以下とすべきであるとしている。Sternら11)はPUVAと有棘細胞癌のリスクのmeta-analysisにおいて、200回あるいは2000J/cm2以上の照射群での発癌率は100回あるいは1000J/cm2以下の照射群の14倍高いことを報告している。Lindelofら12)はPUVAと発癌の関係についての大規模な疫学的研究を行い、200回以上PUVA照射を受けた患者は一般の有棘細胞癌の頻度の実に30倍以上を示すことを明らかにしている。Sternら13)はまた、300回以上のPUVA照射を受けた患者の25%は15年間に有棘細胞癌が発生していること、メラノーマも用量依存的に発生することを報告している。SternのCohort study14)によると、PUVA高照射量群の方がメラノーマ発癌リスクが高いこと、時間の経過と共に発癌リスクが高くなることが示されている。しかし、スエーデンの4799名を用いたCohort study15)ではメラノーマの増加は認められていないが、アメリカの1380人の場合には総照射量が多いほどメラノーマの発癌リスクが高くなることが示されている。しかし、Hannksela-Svahnら16)の乾せん患者158人のcohort studyではbath-PUVAと皮膚癌発生との間にはなんら相関がないと結論している。Narrow-band UVB療法は重症アトピー性皮膚炎に有効であるが、悪性腫瘍の発生についての報告は現在見あたらない。
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