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アトピー性白内障の病因についてはさまざまな説がある。主なものには(1)外胚葉由来である水晶体はアトピー性皮膚炎患者の皮膚同様に障害のターゲットになるというshock organ説1)2)。(2)毛様体上皮が毒素・アレルゲンを放出するという説。3)(3)自己免疫反応に関与するという説4)5)6)7)。(4)顔面の掻破・叩打によるという外傷説8)9)10)。(5)好酸球顆粒蛋白であるMBP(major basic protein)やECP(eosinophilic cationic protein)が水晶体に沈着し眼内組織障害を引き起こすという説11)12)。(6)レンズ上皮のアポトーシスが原因という説13)などがある。またステロイドの全身投与やステロイド点眼剤による白内障や緑内障の誘発は良く知られている。ステロイドはレンズ上皮を障害し、レンズの陽イオンの透過性を亢進させ、そのためにレンズが不透明になっていくと考えられており、おもに後嚢下白内障をきたす14)15)。また緑内障の発生に関しては、おそらくステロイドがtrabecular meshworkのglycosaminoglycanの分解を抑制するために、眼房水のoutflowが抑制され眼圧の亢進をきたすのではないかと考えられている15)。ステロイドによる白内障や緑内障の誘発は、ステロイドの投与量、投与法、投与経路、個人のステロイドに対する感受性の違いなどに依存しているが、一般に白内障は局所投与よりも全身投与によって、逆に緑内障は全身投与よりも局所投与によって高頻度に誘発される15)。ステロイド点眼剤による眼圧の上昇は報告も多く、点眼剤使用例の30%にものぼるという報告もある。市販の0.5%prednisolone sodium phosphateを50μl点眼すると、外用後13〜15分後には測定可能な量のprednisoloneが眼房水内に検出され、60〜240分後にはピーク(22.9〜25.6ng/ml)値に達し、およそ10時間後には検出できなくなる16)。一般に眼圧の上昇はステロイド外用剤の中止によって正常に復することが多いが、感受性の高い患者では外用中止後も継続することがある。また眼囲の皮膚へのステロイド外用剤によっても眼圧の上昇をきたした症例の報告もあり注意を要する17)18)。一方、点眼剤による白内障の誘発は緑内障に比べ頻度は少ない。3年間にわたり、ステロイド点眼剤を使用した136例の報告では、2例の白内障の発生が認められたのみであった15)。しかしながら眼周囲の皮膚へのステロイド外用剤塗布によって白内障が発生したとする報告や吸入ステロイド剤によって白内障が生じたとする報告もある19)。思春期以降に再発あるいは増悪するアトピー性皮膚炎の好発部位は、顔面、頸部、上胸部、上背部、肘・膝関節部であり、ほとんどの症例でなんらかの形でステロイド外用剤が併用されているため、特に顔面へのステロイド外用が白内障の原因ではないかとする報告も見受けられる。 |
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