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カポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)の治療に関してのRCTは検索し得た限り2件のみ、伝染性軟属腫の治療に関するものも2件のみと期待に反してごく少数にとどまり、メタアナリシスなどを行ったSRは存在しなかったことから、直接のEvidenceのレベルは比較的低いものにとどまっている。カポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)の原因ウイルスがHSVであることを考慮に入れると口唇ヘルペス、性器ヘルペスを対象に行われたRCTの結果をもってカポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)にもアシクロビル、バラシクロビルを用いた治療を行うことに十分な背景があると広く受け入れられているものと考えられる。その中で、Niimuraらの報告4)は貴重な報告と考えられた。今後もカポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)の治療の第一選択はアシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス剤であり続けることと考えられるが、本邦ではまだ認可されていないファンシクロビルやペンシクロビルなどについてもHSV皮膚感染症全般に対する効果がいくつかのRCTで確認されており、近い将来の本邦における臨床応用が期待されるとともに、カポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)についての十分な直接のEvidenceとなる研究結果の公表が待たれる。
伝染性軟属腫は発症後しばらくして自然に脱落する場合が多いことが知られており、経過を観察し、自然消退を待つという治療の選択肢も存在する。初診から脱落までの平均期間は約6ヶ月とされている8)が、一方で3年以上持続したとする報告9)もある。ここでは脱落するまでに他へ伝搬する可能性があり、このことが本症の積極的な治療を必要とする根拠となっている。一般には伝統的に鉗子などによる摘除が行われるが、疼痛を伴うので、局所麻酔剤含有テープの前処置が有効とする報告10)がある。薬物療法としては表4に示したような種々の薬剤の有効性が報告されているが、上記した2剤以外のものについてはRCTの報告はみられず、オープン試験やレトロスペクティブな観察によるものが多い。さらに伝染性軟属腫に対して有効とされる薬物療法の多くは本邦において認可されていないか、保険上の適応がないものが多いことも問題となる。現時点では有効で簡便かつ副作用のない薬物療法に乏しいことからも鉗子などによる摘除手技応用を第一に考えるべきであろう。今後も本症の治療成績とくに薬物療法に関して十分なEvidenceを有するRCTが報告され、集積されることが期待される。
表1. カポジ水痘様発疹症の治療としてのアシクロビルとプラセボのRCT
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表2. カポジ水痘様発疹症の治療としてのバラシクロビルの用量設定試験のRCT
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表3. 伝染性軟属腫の治療としての薬剤とプラセボのRCT
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表4. 伝染性軟属腫の薬物療法
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