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油症の診断と治療

■診断基準
油症の診断基準としては、1972年(昭和47年)10月26日に改定された基準がありますが、その後の時間経過とともに症状および所見の変化がみられるため、2回の追加を経て、1981年(昭和56年)より以下のような診断基準が用いられていました。
その後2004年(平成16年)9月29日に血液2,3,4,7,8-pentachlorodibenzofuran(PeCDF)値が診断基準に追補されました。
油症の診断は発病条件と症状、所見を参考に受診者の年齢および時間的経過を考慮のうえ、総合的に判断されます。

 

油症診断基準
  発病条件
  PCBの混入したカネミ米ぬか油を摂取していること。
(ただし、油症母親を介して児にPCBが移行する場合があり、多くの場合で家族発生がみられる。)

  重要な所見
イラスト ドクター
1 ざ瘡様皮疹
顔面、臀部、そのほか間擦部などにみられる黒色面皰(めんぽう)、面皰に炎症所見の加わったもの、および粥状内容物をもつ皮下嚢胞とそれらの化膿傾向。
参考となる症状と所見
1.自覚症状
 1)全身倦怠感
 2)頭重ないし頭痛
 3)四肢のパレステジア
  (異常感覚)
 4)眼脂過多
 5)せき、たん
 6)不定の腹痛
 7)月経の変化
 
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2.他覚的所見
 1)気管支炎所見
 2)爪の変形
 3)粘液嚢炎
 4)血清中性脂肪の増加
 5)血清γ-GTPの増加
 6)血清ビリルビンの減少
 7)新生児のSFD
     (過小体重児)

     (Small-For-Dates Baby)
 8)小児では、
     成長抑制および歯牙異常
     (永久歯の萌出遅延)

2 色素沈着
顔面、眼瞼結膜、歯肉、指趾爪などの色素沈着
(いわゆるブラックベイビーを含む)
3 マイボーム腺分泌過多
4 血液PCBの性状および濃度の異常
5 血液PCQの性状および濃度の異常
参考となる血中PCQ値
1)0.1ppb以上
 :異常に高い濃度
2)0.03〜0.09ppb
 :1)と3)の境界領域濃度
3)0.02ppb(検出限界)以下
 :通常みられる濃度
6 血液2,3,4,7,8-pentachlorodibenzofuran(PeCDF)の濃度の異常
1)50pg/g lipids以上 :高い濃度
2)30pg/g lipids以上、50pg/g lipids未満
 :やや高い濃度
3)30pg/g lipids未満 :通常みられる濃度

※診断基準は油症か否かについての判断の基準を示したもので、必ずしも油症の重症度とは関係ありません。
※血液PCBの性状と濃度の異常および血液2,3,4,7,8-pentachlorodibenzofuran(PeCDF)の濃度の異常については、地域差・職業などを考慮する必要があります。
(昭和51年6月14日補遺、昭和56年6月16日の油症治療研究班会議より5を追加)
(平成16年9月29日にを6追加)
   
  治療〜PCBの化学的特性により体内のPCB排泄促進は困難〜
  現在、油症患者さんの体内のPCBやダイオキシン類濃度は健康な人と同じ程度まで低下している方が多いのですが、まだ高い濃度を示す方もいます。治療法としては、原因物質であるPCBおよびダイオキシン類の排泄を促進するのが最も効果的ですが、残念ながら現在のところ確実に有効な排泄促進剤はまだ見出されていません。
コレステロール低下剤のコレスチラミンと米ぬか線維の経口投与はPCBの排泄を促進させますが、治療薬としての実用性は確立していません。
 
 
従って、治療は各症状に対する対症療法を中心に行われます
イラスト ドクター
イラスト 症状に対する対症療法
 
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