|
アトピー性皮膚炎(AD)は、増悪と軽快、寛解と再燃を繰り返す慢性疾患であり、必要十分な治療によるコントロールを心がけるべきである。AD患者の多くはステロイド外用剤を主体とした標準治療で十分にコントロールできる。しかし、通常の外用治療で十分にコントロールできない例や、ステロイドの長期連用によって副作用をきたす例に対し、ステロイドに代替しうる十分な効果をもつ新たな治療法が求められる中、免疫抑制剤による治療が注目されている。
シクロスポリンは11個のアミノ酸からなる環状の疎水性の強いペプチドで、細胞内受容体であるシクロフィリンと複合体を形成し、カルシニューリンに結合することでカルシニューリンの活性化を阻害する免疫抑制剤である。シクロスポリンは、臓器移植における拒絶反応抑制剤として本邦では1985年に承認された。その後1987年にベーチェット病、1992年に乾癬に対する効能が追加されている。それに並行して、吸収のばらつきが大きかった従来の油性製剤(サンディミュン®)から、マイクロエマルジョン前濃縮製剤(MECP)であるネオーラルRが開発され、現在主に用いられている。
ADに対するシクロスポリン内服療法の有効性は早くから期待され、欧米では1990年代前半に臨床試験が進められた。現在では、アトピー性皮膚炎に対する効能は、1995年にイギリスでの認可を皮切りに60カ国以上で承認されている。本邦でも2008年に、既存治療で十分な効果が得られない患者を対象に保険適応が承認された。本症に対するシクロスポリン内服療法はガイドラインが示されているが、国内外のエビデンスを蓄積することはその適正使用において有益と考えられる。 |
|