(1)症状がない状態にする、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態にする。
(2)軽い症状は続くが、急に悪化することはなく、悪化してもその状態が続かないようにする。
わたしたち医師が、まず目指す治療の目標は、“普通の治療で普通の生活ができる”ことです。もちろん、治療の目標は患者さんによってそれぞれ異なりますし、同じ患者さんでもその時々により変更することも可能です。患者さん一人ひとりが自分の治療目標を設定することで、知らずしらずのうちにアトピー性皮膚炎をコントロールできるようになります。
アトピー性皮膚炎は体質的な肌の乾燥、皮膚の炎症、かゆみと掻破を繰り返します。そのため皮膚に強いダメージが加わり、細菌の繁殖も増加します。そこで、治療の基本は次の通りとなります。
1.入浴と洗浄によって皮膚を清潔に保つ
2.皮膚の乾燥に対しては保湿薬を全身に塗る
3.皮膚の炎症に対してはステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を塗る
4.かゆみに対しては抗ヒスタミン薬を内服する
重症例では、紫外線療法、ステロイド内服やシクロスポリン内服を追加しますが、保湿薬・ステロイド外用薬・タクロリムス軟膏の適切な使用法を理解していれば、ほとんどのアトピー性皮膚炎は自分でコントロールできるようになります。
ステロイド外用薬もタクロリムス軟膏も皮膚の炎症を鎮静化させる免疫抑制剤です。皮膚の炎症を抑えることが臨床試験でも十分に証明されています。ステロイド外用薬は1953年から、タクロリムス軟膏は1999年から医療現場で使用されています。
「ステロイド外用薬は恐ろしい」という風評は、今なお世界中に広がっています。
塗っても大丈夫だろうか? 副作用がでるのではないか? などと、どうしても心配になり、適切に使用されていないのが現状です。しかし、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏、また保湿薬の効能を正しく理解し、その塗り方を習得すると、驚くほど治療効果があらわれます。治療効果を体験しなければ、自分自身でアトピー性皮膚炎を上手にコントロールすることはできません。ぜひ、正しい治療法のノウハウを体得しましょう。
日常のケアとしては、毎日の入浴やシャワーが大切です。泡立てた石鹸でやわらかく洗い、すすぎをしっかり行いましょう。引っ掻いて傷ついた皮膚は滲出液〈しんしゅつえき〉が付着し、細菌が繁殖しやすいため、入浴やシャワーによる皮膚の洗浄が必要です。
入浴やシャワーによって皮膚にうるおいを与えられますが、入浴後何もしないとすぐに乾燥してしまいます。皮膚が乾燥する前に、保湿薬を全身に塗るのがスキンケアのコツです。