皮膚は細菌、ウイルス、化学物質などさまざまな外敵から身を守る役割をしています。皮膚を掻く事は皮膚バリア機能を低下させる事になります。
1日100回掻いていた人が80回に減らすだけでも、アトピー性皮膚炎は改善します。かゆみが生じるしくみを理解して、少しでも掻く回数を減らしましょう。
昆虫は地球上の生物の中で最も種類が多く、約100万種と言われ、それらの中にはヒトに害を及ぼすものもいます。虫さされから病気(マラリア、デング熱、つつがむし病など)が伝染することもあります。皮膚にとまった虫を敏感に感じとり、引っ掻き取ることは害虫から身を守る大切な反応です。虫に刺されたら引っ掻かずにかゆみ止めを塗りましょう。かゆいところを血がでるほど引っ掻くと細胞が壊れ、敵が侵入してきたことを知らせる警戒警報(様々なサイトカイン)が発令されます。それらが虫担当のマスト細胞、好塩基球(これらはかゆみの素のヒスタミンを満載しています)の活動を活発にし、さらにかゆみが強くなり引っ掻くことになります。また、虫さされをきっかけに皮膚を掻くと、警戒警報の発令によりアトピー性皮膚炎の部位までかゆくなり、掻いてしまうことになります。
虫がとまっているような感覚をおぼえやすい接触刺激(髪の毛、毛のセーター、ネックレスなど)も、かゆみを誘発するため注意が必要です。
皮膚バリア機能を補う目的で保湿薬を使用すると、かゆみを感じにくくなるでしょう。
皮膚を引っ掻くと、脳内報酬系がはたらき、「気持ちよさ」を感じます。皮膚が敏感に「接触」を感じ取るだけでは虫は取り除けません。引っ掻き取るとご褒美に「気持ち良さ」を感じると考えられています。ストレスがあるとつい引っ掻いてしまい、スッキリする、という行動を繰り返しやすくなります。
また、運動しているときは少しの接触(かゆみ)刺激は感じにくいものですが、動かずにじっとしていると、接触刺激を敏感に感じます。部屋でぼんやりしているとき、机に向かって集中できないとき、布団に入って眠れないときなどにかゆみを感じやすいのは、そのためです。かゆみを感じたら、弱い接触刺激をかき消すような他の強い刺激(たとえば運動による広範囲の接触刺激など)を脳に入れるとかゆみは軽減します。また、かゆいところを冷やすとかゆみを感じにくくなります。布団の中で引っ掻くことが多い人はかゆみ止めの抗ヒスタミン薬を寝る数時間前に服用し、就寝時に効果が最大限発揮されるように工夫しましょう(使用する薬の種類や個人により効果のあらわれる時間が異なります)。
汗はさまざまな刺激物質をふくみます。汗がたまるところは、かゆみが起きやすいところです。また、乾燥すると皮膚のバリア機能が低下して、刺激が入りやすくなります。入浴後は保湿薬を全身にしっかり塗りましょう。