かゆみを引き起こす体内物質として、ヒスタミン、インターロイキン31、ロイコトリエンなどさまざまな物質が知られています。これらの物質に有効な薬で開発が進んでいるのは、抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬はヒスタミンによるかゆみを抑制します。アトピー性皮膚炎のかゆみはさまざまな体内物質によって複合的に生じていますので、抗ヒスタミン薬だけでアトピー性皮膚炎のかゆみを100%抑えることはできません。しかし、抗ヒスタミン薬によって、アトピー性皮膚炎のかゆみが部分的に軽減できることが臨床試験によって明らかになっています。抗ヒスタミン薬の成分と商品名を表4に示しました(ジェネリックの数も多いため、すべての商品名は記載していません)。一部、抗ヒスタミン作用はないものの、ヒスタミンを体内で遊離する肥満細胞の活性化を抑える薬剤も、アトピー性皮膚炎の治療薬として保険適応になっています。
抗ヒスタミン薬のかゆみ軽減効果には個人差があります。眠気の副作用がみられることがありますが、これに関しても抗ヒスタミン薬の種類によってかなりの個人差がみられます。できれば数種類の抗ヒスタミン薬を試して、かゆみに対する効果と眠気の副作用を比較しながら、患者さんそれぞれに応じた抗ヒスタミン薬を選択します。
(1) 抗ヒスタミン薬(眠気が強い) |
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ジフェニルピラリン塩酸塩(ハイスタミン®) ジフェンヒドラミン塩酸塩(ベナ®、レスタミン®) シプロヘプタジン塩酸塩水和物(ペリアクチン®) 塩酸トリプロリジン(ベネン®) ヒドロキシジン塩酸塩(アタラックス®) プロメタジン塩酸塩(ヒベルナ®、ピレチア®) ホモクロルシクリジン塩酸塩(ホモクロミン®) アリメマジン酒石酸塩(アリメジン®) タンニン酸ジフェンヒドラミン(レスタミンA®) クロルフェニラミンマレイン酸塩(アレルギン®、クロール・トリメトン®、マレイン酸クロルフェニラミン®、ネオレスタミン®) d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®、ネオマレルミンTR®) ジフェニルピラリンテオクル酸塩(プロコン®) ヒドロキシジンパモ酸塩(アタラックスP®) クレマスチンフマル酸塩(タベジール®) |
(2) 抗ヒスタミン薬(眠気が比較的弱い) |
エバスチン(エバステル®) アゼラスチン塩酸塩(アゼプチン®) エピナスチン塩酸塩(アレジオン®) オロパタジン塩酸塩(アレロック®) セチリジン塩酸塩(ジルテック®) フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラ®) オキサトミド(セルテクト®) フマル酸エメダスチン(ダレン®、レミカット®) ケトチフェンフマル酸塩(ザジテン®) ベポタスチンベシル酸塩(タリオン®) メキタジン(ニポラジン®、ゼスラン®) ロラタジン(クラリチン®) |
(3) 抗ヒスタミン作用のないもの |
クロモグリク酸ナトリウム(インタール®) トラニラスト(リザベン®) トシル酸スプラタスト(アイピーディ®) |
(2009年4月現在)