B5版 288頁 ISBN 978-4-7985-0007-2 |
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最近10年間のあゆみ:
全国油症治療研究班は、カネミ油症に関する学術的書籍として、Yusho-A human disaster caused by PCBs and related compounds (Masanori Kuratsune, Hidetoshi Yoshimura, Yoshiaki Hori, Makoto Okumura, Yoshito Masuda編、Kyushu University Press, 1996年)、「油症研究 −30年のあゆみー」(小栗一太、赤峰昭文、古江増隆編集、九州大学出版会、2000年)、「Long-term effects of polychlorinated biphenyls and dioxins in humans - Lessons from Yusho -」(Masutaka Furue編集、Journal of Dermatological Science, Supplement1,Elsevier社、2005年)をこれまでに刊行してきた。また班研究の研究成果は隔年に福岡医学雑誌に報告されてきた。2009年には「油症とPCB 及びダイオキシン関連化合物に関する研究報告集」は第22 集が発刊されている。
油症の発生当時の状況、原因究明、原因となったカネミ油に含まれたダイオキシン類・PCB類の種類と濃度、急性期の様々な症状、臨床検査異常、血中や体脂肪中のダイオキシン類・PCB類の濃度とその推移、さまざまな治療法の試みなどは、これらの既刊書に詳細に記されている。「油症30年のあゆみ」を刊行後、全国油症治療研究班の治療研究に大きな転機が訪れた。それは分析技術の進歩によってダイオキシン類濃度とりわけ油症発症の最大の原因物質である2,3,4,7,8-pentachlorodibenzofuran (PCDF)の血中濃度を、2001年から検診で測定することが可能となったことである。そのことによって、さまざまな臨床症状や検査値異常とPCDF濃度との関連性を明らかにすることが可能となった。また油症患者の現状や症状経過を円滑に把握することを目的として、油症相談員制度が2002年から開始された。しっかりとした臨床試験に基づいた治療効果のエビデンスを明らかにするために、2005年からまず漢方薬による臨床試験が開始された。2008年には九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターが設置され、五島中央病院に油症外来がオープンした。このような経緯を踏まえ、最近10年間の学術的研究成果を「油症研究U―治療と研究の最前線―」として本書に収載することとなった。本書の刊行は、われわれ編者一同にとって、大きな喜びである。と同時に、油症の治療研究という高い高い頂きをみつめながら、忸怩たる思いであることも事実である。
振り返ってみると、最近10年間のあゆみは、まるで大きなうねりをみるようである。その間の多くの患者さんたちのご努力とご協力に深甚なる感謝の念で一杯である。また本書の執筆者の皆様、全国油症治療研究班の皆様、検診を運営していただいている各県行政の方々、油症相談員の皆様、油症ダイオキシン研究診療センターの皆様、厚生労働省担当課の皆様、そして九州大学出版会の皆様に心より御礼を申し上げたい。
謝辞:本書は、厚生労働省科学研究費によって刊行されている。
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