九州大学医学部 皮膚科学教室 九州大学大学院医学研究院臨床医学部門外科学講座皮膚科学分野

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厚生労働科学研究費補助金 免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及 平成14年度  総括・分担研究報告書

 
 
▼ アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及
▼ 表皮細胞のbasal-to-apical permeabilityに対するTh1/Th2サイトカインの影響に関する研究
▼ 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・痒みのEBMによる評価に関する研究
▼ タクロリムス外用薬のEBMによる評価
▼ アレルゲンとアレルゲン除去療法のEBMによる評価
▼ アレルゲンとアレルゲン除去療法のEBMによる評価、環境汚染のEBMによる評価及び関連する基礎的研究
▼ 民間療法のEBMによる評価
▼ 紫外線療法の EBM による評価
▼ EBMによるスキンケアの再評価
▼ ステロイド外用剤のEBMによる評価
▼漢方療法のEBMによる評価
▼ アトピー性皮膚炎におけるシクロスポリン内服療法のEBMに関する研究
▼ エビデンスの信頼度の順位付けに対する統計学的考察に関する研究
 

アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及

【主任研究者】 古江増隆/九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野教授
  【研究要旨】
本 研究は、1)アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2001をさらに改訂・充実していくとともに、アレルゲンとアレルゲン除去療法、抗ヒスタミン薬・抗アレル ギー薬、バリア機能・スキンケア、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、シクロスポリン内服、紫外線療法、漢方療法、環境汚染、細菌・ウイルス感染、眼 病変、痒みの評価とコントロール、民間療法などについてEBMに基づいた解説書あるいはデータブックを作成すること、さらに、2)基礎的な研究では、皮膚 を炎症の場とするアトピー性皮膚炎の病態をさらに解明するために、リンパ球などの免疫系だけでなく表皮細胞などの皮膚の構成細胞の両面から検討を進めるこ とを目的としている。今年度は、1)上記の各項目である程度まとまったものをまとめ、解説書(データブック)の第1報を作成した。2)研究面では、IL- 4が表皮細胞の透過性を亢進させ、IFN-gがそれを抑制することを明らかにし、さらに、高感度な環境中ダニアレルゲンの皮膚表面暴露量測定法の確立に成 功した。
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表皮細胞のbasal-to-apical permeabilityに対する
  Th1/Th2サイトカインの影響に関する研究

【分担研究者】 古江増隆/九州大学大学院医学研究院皮膚科学教授
【研究協力者】 小林順一/九州厚生年金病院 皮膚科 医師
師井洋一/九州大学大学院医学研究院皮膚科学講師
占部和敬/九州大学大学院医学研究院皮膚科学講師
古賀哲也/九州大学大学院医学研究院皮膚科学助教授
  【研究要旨】
 皮膚炎では、表皮細胞間浮腫、表皮内水疱形成など表皮の物質透過性が高まっていることが知られているが、その病態形成機序については明らかではない。本研究 では、表皮細胞シートの基底膜側から表層への(basal to apical permeability)物質透過性に対するIL-4、IFN-gammaの影響をin vitroで観察した。その結果、IL-4は物質透過性を亢進させ、IFN-gは物質透過性を低下させることが明らかになった。今後は、分子レベルでその 機序を解明したい。
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抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・痒みのEBMによる評価に関する研究

【分担研究者】 溝口昌子/聖マリアンナ医科大学皮膚科教授
【分担協力者】 上西香子/聖マリアンナ医科大学皮膚科助手
  【研究要旨】
 すでに報告されている二つの抗ヒスタミン薬に関するレビューより、抗アレルギー薬(第二世代抗ヒスタミン薬)のデータを抜粋し、評価した。ランダム化比較試 験を行った報告は17報告あり、10報告が抗アレルギー薬の有用性を証明していた。しかし、質の高い報告は少なく、今後の質の高い文献の蓄積が望まれる。
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タクロリムス外用薬のEBMによる評価

【分担研究者】 佐伯秀久/東京大学大学院医学系研究科皮膚科学講師
【研究協力者】 鳥居秀嗣/社会保険中央総合病院皮膚科部長
  【研究要旨】
 現在成人アトピー性皮膚炎治療に広く使用されているタクロリムス外用薬の有効性および安全性についてEBMに基づく評価を行った。無作為二重盲検などの臨床 試験から有効性は十分に証明されており、また同様に施行された大規模な安全性調査の結果から、現在までに本剤との因果関係が証明された全身性の重篤な副作 用は無い。
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アレルゲンとアレルゲン除去療法のEBMによる評価

   
【分担研究者】 柴田瑠美子/国立療養所南福岡病院小児科医長
【研究協力者】 手塚純一郎/国立療養所南福岡病院小児科医師
  【研究要旨】
 アレルゲン除去食療法の治療効果について臨床研究論文を中心にEBM評価をおこなった。小児では、十分なエビデンスではなかったが、ランダム試験による皮疹改善効果が5/8件で評価され、食物アレルゲン陽性で効果的であった。リスク児における生後の母乳および児の除去食によるアトピー予防効果の3件のエビデンスがあったが、長期効果はなく、妊娠中のみの除去食効果はなかった。症例対象研究では除去食効果は高かったが対照群のない検討であった。
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アレルゲンとアレルゲン除去療法のEBMによる評価、
  環境汚染のEBMによる評価及び関連する基礎的研究

  1.環境中ダニアレルゲン定量法及び皮膚表面暴露量測定法の確立に関する研究
2.アトピー性皮膚炎に対するアレルゲン除去の効果のEBM文献検索
【分担研究者】 秋山一男/国立相模原病院臨床研究センター センター長
【研究協力者】 安枝 浩、斉藤明美、西岡謙二、轡田和子、川口博史
竹内瑞恵、立脇聡子/国立相模原病院臨床研究センター
  【研究要旨】
1. 環境中ダニアレルゲン定量法及び皮膚表面暴露量測定法の確立に関する研究
環境中アレルゲンとアトピー性皮膚炎病態との関連については、未だ明確な結論は出ていない。一方、環境中のアレルゲン量と実際のヒトの暴露量との関連につ いても不明の点が多く残されている。本研究では、ELISAによるダニアレルゲン簡易定量法の開発とテープ法による寝具表面、及びヒトの皮膚表面からダニ アレルゲンを直接検出、定量できるシステムを開発した。本検査法を用いた結果、寝具表面のDer 1 量と寝具内部のDer 1 量との間には弱い相関が認められた。寝具表面のDer 1 量と皮膚表面のDer 1 量との間には有意な相関を認めた。テープ法によるダニアレルゲンの定量は、ダニアレルゲンの汚染の指標、暴露の指標として有用であると考えられた。
2. アトピー性皮膚炎に対するアレルゲン除去の効果のEBM文献検索
環境アレルゲンとアトピー性皮膚炎の病態機序との関わりについては、未だ明確な結論は出ていない。
本研究では、アレルゲン除去によるアトピー性皮膚炎への影響に関するEBM文献を検索することにより、アレルゲン除去の重要性を検証することを試みた。Pub Medにより“allergen avoidance”and“atopic dermatitis”で検索したところ26件の文献が抽出された。その中でclinical trialは5件であり、その内randomized controlled trialは4件、controlled clinical trialが1件であった。アレルゲン除去の効果については、発症予防及び増悪予防の視点からさらなるデータの集積が必要である。
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民間療法のEBMによる評価

【分担研究者】 金子史男/福島県立医科大学皮膚科・教授
【研究協力者】 中村晃一郎/福島県立医科大学皮膚科
古川裕利/福島県立医科大学皮膚科
  【研究要旨】
  民間療法は、地域に伝承されるいわゆる補助療法と考えられ、食物、皮膚に塗布するもの、生活環境を変えるものなどが存在する。アトピー性皮膚炎はその経過が 長期にわたり、皮膚炎の寛緩再燃を繰り返すため、数多くの民間療法が施行されている。しかしこれらの効果について科学的に検証されているものはみられな い。EBMによる民間療法を検討評価するために、アトピー性皮膚炎患者の数、性別、年齢をコントロール群と一致させ、コントロール群と比較する内容で民間 療法の有効性、安全性を科学的に解析した文献を検索した。しかし民間療法においてランダム化多施設二重盲検比較試験は調べた範囲では見出せなかった。民間 療法の有効性、安全性を評価するためには科学的な解析に基づいた検証が不可欠であると考えられる。また不適切な民間療法を施行したことによって多数の副作 用が生じた現状が報告されており、不適切な民間療法に関して再認識することが必要であると思われる。
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紫外線療法の EBM による評価

【分担研究者】 高森建二/順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院皮膚科教授
河井正晶/順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院皮膚科助手
  【研究要旨】
 アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法のEBMによる評価を、過去報告された文献をMedlineにて検索することにより検討した。その結果、1)PUVA 療法は重症アトピー性皮膚炎に対してUVB療法より優れた効果を発揮すること、2)UVB療法は中等症アトピー性皮膚炎には有効であること、3) Narrow-band UVB療法は中等症から重症アトピー性皮膚炎に有効であること、4)High-dose UVA1は急性増悪したアトピー性皮膚炎に対しステロイド外用薬と同等の効果を示すこと、5)紫外線療法には発癌性があり、特に有棘細胞癌とメラノーマの 発症は照射回数、総照射量に依存すること、が示されている。しかし、EBMを満足するには未だ不十分で、今後更なる検討が必要である。
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EBMによるスキンケアの再評価

【分担研究者】 秀 道広/広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授
  【研究要旨】
  ア トピー性皮膚炎の治療においては皮膚炎の鎮静化を図るのみでなく、バリア機能障害などの皮膚の機能異常を改善させることを目的としたスキンケアも重要であ ることは多くの皮膚科臨床医に常識的に認識されているものと思われる。しかしその重要性はevidenceをもって証明されているか否かは不明である。こ れまでに公表されているアトピー性皮膚炎の治療に関するsystematic reviewはCochrane groupの「Systematic review of treatments for atopic eczema」とBritish Medical Journal Publishing Groupの「Clinical Evidence」のみである。これらによって見いだされたアトピー性皮膚炎のスキンケアに関するランダム化試験の報告は5件のみであった。それらの systematic review以降に発表された報告は1件見られた。これらによって尿素軟膏、乳酸アンモニウム外用薬の他、数種の保湿外用薬の有効性が報告されている。し かしこれらは幾つかの保湿外用薬の効果比較であるにすぎず、保湿外用薬を用いることでステロイド外用薬の使用量を節約できるか、あるいは寛解期のアトピー 性皮膚炎患者の寛解期間を延長できるものであるか否かという命題に解答を与えるものではない。今後はこの疑問に答えうる臨床試験を計画する必要があると思われる。
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ステロイド外用剤のEBMによる評価

【分担研究者】 大矢幸弘/国立成育医療センター第一専門診療部アレルギー科医長
  【研究要旨】
  ア トピー性皮膚炎の治療にステロイド外用剤は中心的な役割を担っている薬剤であるが、重症患者や長期に使用する患者が増加するにつれて、副作用の懸念が生じ た。また、メディアによって増幅されたステロイド忌避が患者と一部の医師の間に蔓延して医療現場は混乱の様相を呈したが、この薬剤のエビデンスに基づいて 評価することで、こうした混乱の収束とアトピー性皮膚炎の適切な治療が浸透することが望まれる。研究方法は本文で詳述する文献検索により多数の文献が見つ かった。その多くはステロイド外用剤の短期使用の効果を証明するためのプラセボもしくは他の薬剤との比較試験(ステロイド外用剤同士を含む)であった。し かし2000年代に入ってから発表された論文には長期使用の効果や副作用を調査したものが散見されるようになっており、ストロングクラス以上のステロイド 外用剤であっても、間欠投与によって長期使用による副作用を回避できることが明らかとなりつつある
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漢方療法のEBMによる評価

【分担研究者】 諸橋正昭/富山医科薬科大学皮膚科教授
【研究協力者】 豊田雅彦/富山医科薬科大学皮膚科助手
  【研究要旨】
 アトピー性皮膚炎 (AD) に対する漢方療法の EBM による有用性の評価を行った。その結果は以下のように要約される。(1) ランダム化比較試験 (RTC) 、二重盲検やクロスオーバーの採用などによる臨床試験はごく少数であった。(2) RTC など一般にエビデンスのレベルの高い試験の本邦における報告は認められなかった。(3) 試験の多くは症例集積研究であり、少数の症例対照研究もみられた。(4) 症例集積研究では、症例数や有効性の評価法にばらつきがみられたが、多くの漢方方剤での有効性が報告された。(5) 本EBM の評価には、証 (個体の適応) の扱いやプラセボ作製が困難であることなど、漢方療法の特殊性を考慮に入れる必要があると考えられた。
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アトピー性皮膚炎におけるシクロスポリン内服療法のEBMに関する研究

  竹原和彦/金沢大学大学院医学系研究科血管新生・結合組織代謝学(皮膚科学)分野教授
  【研究要旨】
  アトピー性皮膚炎におけるシクロスポリン内服療法のEBMに関する情報を収集し解析したところ,グレードAの多施設二重盲験施設による論文複数により,その有用性は明確にされているものと結論された。
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エビデンスの信頼度の順位付けに対する統計学的考察に関する研究

【分担研究者】 野瀬善明/九州大学大学院医学研究院 医療情報学分野1)教授
【研究協力者】 宮崎美穂1)絹川直子1)中村 剛/長崎大学人間環境学部 教授
  【研究要旨】
  EBM運動で示されているevidenceの信頼度の順位付け表は、統計学的解析手法が詳述されておらず、臨床医が調査して発見したevidenceのひとつひとつについて的確に信頼度順位をつけることができない。
 
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