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Olive oil-induced reduction of oxidative damage and inflammation promotes wound healing of pressure ulcers in mice

Aline Donato-Trancoso, et al. Journal of Dermatological Science, 2016 July.60-69.

背景
活性酸素(ROS)の過剰産生と、炎症反応の悪化は、褥瘡治癒の妨げとなる主な病態である。
近年、オリブ油は、慢性的なストレスを与えたマウスにおいて、炎症反応を抑制し、創傷治癒を促すことが報告されているが、褥瘡の治癒を促すか否かに関しては今までに検証されたことがない。 そこで著者らは、虚血による皮膚損傷を生じたモデルマウスにオリブ油を経口投与し、抗炎症・抗酸化作用により褥瘡の創傷治癒を促すか否かを検証した。

要約

  1. オリブ油は、虚血性皮膚病変の主な原因となるROSとNO合成を制御し、酸化ダメージを抑制した。
  2. オリブ油は、慢性炎症の主体である、好中球やマクロファージの浸潤や、これらのプロテアーゼ(好中球エラスターゼ、MMP-1)、炎症性サイトカイン(TNF-α)を減少させた。
  3. オリブ油は再生上皮を増加させた。また、血管内皮細胞成長因子であるVEGF-A発現を増加させ、血管新生を促進した。
  4. オリブ油はTGF-β1発現、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化、コラーゲン新生を促進した。

結論
オリブ油は、ROSとNO合成を制御することにより、炎症反応と酸化ダメージを抑制し、皮膚の再生を促し、褥瘡の創傷治癒を促進した。更に、再上皮化と血管新生を促し、壊死組織の減少と創縮小をもたらした。
以上より、オリブ油は褥瘡治療において、治療法の選択肢の一つとなり得る。

溝手 美華 2016/9/10

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