Journal Club

The Aryl Hydrocarbon Receptor-Activating Effect of Uremic Toxins from Tryptophan Metabolism: A New Concept to Understand Cardiovascular Complications of Chronic Kidney Disease

Marion S et al. Toxins, 2014; 6: 934-949.

 慢性腎疾患(CKD)の患者は心血管イベントに対し高いリスクを持ち、動脈硬化の進行により様々な疾患を発症する。CKD患者は尿毒素に恒久的に曝露され、尿毒素は動脈硬化を惹起する病原物質としての役割を果たす。この研究では、トリプトファン代謝により発生する尿毒素に注目した。なぜならそれが潜在的な心血管毒性を持つからである。

 尿毒素は、インドール尿毒素(インドキシル硫酸、インドール-3-酢酸、インドキシルβDグルクロン酸)が産生される経路と、キヌレイン経路によってキヌレイン、キヌレン酸、3-ヒドロキシキヌレイン、アントラニル酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、キノリン酸が産生される二つの経路がある。

 トリプトファン由来で産生された尿毒素は、転写因子AhRの内因性リガンドでもある。 AhRはダイオキシン受容体として周知されているが、様々な制御たんぱく・シグナルたんぱくと相互作用を持ち、それにはたんぱく分解酵素やフォスファターゼ、NF-κβを含む。 2,3,7,8-TCDDとその他のPCBによるAhR活性化は、人間やマウスでの心血管疾患を増加させ、この活性は心毒性や血管の炎症、血管細胞の凝固促進・酸化促進作用によってもたらされる。

 トリプトファン由来で産生された尿毒素は、細胞の酸化、炎症、凝固、アポトーシス促進作用を持ち、心血管系の細胞にもその作用を持つ。尿毒素はAhR活性を介在してダイオキシン様の作用を持つことにより、心血管リスクを上昇させていると考えられた。

佐藤 晋平 2016/8/23

閉じる