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Smad7 knockdown restores aryl hydrocarbon receptor-mediated protective signals in the gut

Monteleone I et al. Journal of Crohn’s and Colitis, in press.

 クローン病 (Crohn’s disease [CD]) は免疫機能のバランスが崩れ、免疫応答が過剰になることで発症する疾患である。
その分子機序のひとつとして転写因子である AhR の関与が知られており、AhR が腸において保護的に作用することが報告されている。腸管粘膜には粘膜固有層単核球 (lamina propria mononuclear cells [LPMC]) が存在しており、CD LPMC では AhR の発現が減少していることも知られている。さらに、CD LPMC では TGF-β1 の阻害分子である Smad7 が上昇していること、加えて TGF-β1 が別の系において AhR を調節していることも報告されていることから、本研究では腸管における AhR と Smad7 の関連を調べることを目的とした。

 まず、正常の LPMC では、TGF-β1 により AhR mRNA およびタンパク質が共に増加し、その結果、AhR リガンドである FICZ 誘導性の IL-22 の産生量も増加した。IL-22 は腸管において保護的に働くサイトカインである。次に、Smad7 が発現上昇している CD LPMC に Smad7 antisense を添加すると、TGF-β1 による AhR 発現上昇を増強できた。また、定常状態および TGF-β1 誘導性の AhR 発現量、そして FICZ 誘導性の IL-22 産生量は Smad7 Tg マウス由来 T 細胞において著しく減少していた。さらに、RAG1 マウスにおいて、FICZ は正常 T 細胞依存性腸管炎症モデルの病態を改善したが、Smad7 過剰発現 T 細胞を移入した腸炎炎症モデルでは影響が認められなかった。

 以上より、Smad7 と AhR は逆相関しており、CD においては Smad7 が増加しているため、腸管における炎症シグナルが増大するのを助長している可能性がある。

Keywords:
・CD: クローン病 (Crohn’s disease).
・LPMC: 粘膜固有層単核球 (lamina propria mononuclear cells).
・Smad7: TGF-β1 の阻害分子.

古賀 沙緒里 2016/5/27

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