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Local Generation of Kynurenines Mediates Inhibition of Neutrophil Chemotaxis by Uropathogenic Escherichia coli,

-キヌレインの局所産生は、尿病原性大腸菌による好中球のケモタキシスの抑制を制御する-

Loughman JA, et al. Infect Immun. 2016 Mar 24;84(4):1176-83. doi: 10.1128/IAI.01202-15.

上皮の感染において、病原性細菌は多核白血球(好中球)の浸潤といった宿主の免疫応答を弱くし、逃れるために様々な策略を有している。ヒトにおいて感染症は最もよく尿路に起こり、これは尿病原性大腸菌によって生じる。細菌性膀胱炎の発症において、尿病原性大腸菌は千差万別の戦略で自然免疫の応答を抑制している。

私達は、最近の研究で、尿病原性大腸菌はindoleamine 2,3-dioxygenase (IDO)(トリプトファン異化酵素。獲得免疫を制御する働きがあることは報告されているが、自然免疫への働きは分かっていない)を特異的に局所に誘導することで、膀胱に多核白血球が遊走するのを阻止していることを報告した。

本研究では、この局所のIDOの誘導が多核白血球の遊走を阻止するメカニズムについて研究を行った。IDOはT細胞においてはトリプトファンの利用率を変化させて細胞の寿命や増殖に影響を及ぼすことから、トリプトファンを除去した環境下での多核白血球の性質について検討したが、多核白血球の遊走には何も変化はなかった。その代わりに、IDO pathwayの代謝産物で、とりわけキヌレニンが直接的に多核白血球の遊走を抑制し、好中球の活性化されていない状態・ケモタキシスが誘導された状態の両方で好中球が遊走しにくい形態(付着性で広く伸びた形態)を誘導することを発見した。最後に、キヌレニンは代表的なaryl hydrocarbon receptor (AhR)のリガンドであることから、尿病原性大腸菌感染をAhRノックアウトマウスに起こしたところ、多核白血球の遊走の抑制は起こらず、これは以前報告したIDO1ノックアウトマウスと同様の結果であった。

したがって、尿病原性大腸菌は細菌性膀胱炎においてIDOによるキヌレニン産生を増加させることによって、好中球の遊走を抑制しており、さらにキヌレニンはAhRを介して好中球のケモタキシスを抑制していることが分かった。

辻 学 2016/4/10

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