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Metabolomics Reveals that Aryl Hydrocarbon Receptor Activation by Environmental Chemicals Induces Systemic Metabolic Dysfunction in Mice.
「環境化学物質による芳香族炭化水素受容体の活性化はマウスにおいて全身的な代謝異常を来すことがメタボロミクス解析によって明らかとなった。」

Zhang L, et al.
Environ Sci Technol. 2015 Jun 12. [Epub ahead of print]

 ダイオキシンやダイオキシン様物質による環境暴露はヒトの健康に非常に大きなリスクを来す。芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor: AhR)の活性化による毒性のメカニズムをより理解することは、リスクアセスメントの信頼度を改善するように考えられる。

 本研究では、2,3,7,8-tetrachlorodibenzofuran (TCDF)にマウスを曝露して、血清と肝臓を採取し、AhR依存性の代謝反応を1H nuclear magnetic response (NMR)-based metabolomicsおよびmetabolic profilingによって解析した。1H NMR解析では、TCFF暴露はAhR依存性にグルコース新生とグリコーゲン分解を抑制し、脂肪産生を促進し、炎症反応を惹起した。マススペクトロメトリーとガスクロマトグラフィーを組み合わせた検査では、TCDFは不飽和/飽和脂肪酸の比率を変えることが明らかとなった。

 これらの結果に一致して、肝臓でのstearoyl coenzyme A desaturase 1 の発現の増加が認められた。さらに、TCDFはacetyl-CoA, malonyl-CoA, palmitoyl-CoA代謝物と関係するmRNAレベルを低下させ、de novoの脂肪酸生合成を抑制した。対照的に、AhRの欠損したマウスでは、TCDFに曝露しても、血清および肝臓におけるグルコースと脂質の量に有為な差は生じなかった。

 以上より、AhRはTCDFによる代謝の影響において重要な働きをすることが示唆された。



辻 学 2015/6/29

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