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Increased expression of aryl hydrocarbon receptor in patients with chronic inflammatory skin diseases

Exp Dermatol, on line, 2014;23(272-293)

【要旨】

 Polychlorinated binephenyls(PCBs)と2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)は、重要な環境汚染物質であり、aryl hydrocarbon receptor (AhR) を介して、人体へ危機的な影響を与える。
筆者らは、アトピー性皮膚炎患者、乾癬患者、健常人から皮膚生検を行い、アトピー性皮膚炎や、乾癬のような慢性炎症性皮膚疾患におけるAhRと、そのリガンドの意義について評価するために、以下の方法で検討を行った。


 すべての皮膚生検標本において、蛍光抗体法でAhRとARNTの局在を染色し共焦点顕微鏡で観察した。アトピー性皮膚炎患者表皮においては、わずかにAhR、ARNTの発現がみられたが、AhRとARNTの同局在はなかった。一方、乾癬患者表皮では、表皮全層性にAhR、ARNTが、アトピー性皮膚炎、コントロール群と比較して強く発現しており、表皮下層では、AhRとARNTの同局在もみられ、AhR経路の活性化が示唆された。
AhR、ARNT、CYP1A1のmRNAを、PCRで測定したところ、アトピー性皮膚炎患者ではAhR,ARNT,CYP1A1で有意に高い発現がみられた。乾癬患者ではAhR, ARNTの発現は有意に高かったが、CYP1A1の発現は低かった。
また、AhR、ARNT抗体を用いて免疫組織化学染色を行い、画像解析を行った。乾癬患者はアトピー性皮膚炎と正常コントロール群と比較して、表皮でのAhRの発現を、強く認めた。しかし、ARNTの発現は3群間で有意差はなかった。


 また、TCDD、PCBsで処理後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEKs)を用いて、ELISAでサイトカインの発現パターンを分析した。IL-6とIL-8はTCDDとPCBs両方の処理の後、投与量に依存して増加した。両サイトカインは、PCBs処理後4時間、TCDD処理後8時間後にピークに達した。IL-6とIL-8の値は、PDBs処理後より、TCDD処理後の方が高かった。AhRのアンタゴニストであるCH223191処理後、IL-6とIL-8の値は減少した。


 この結果は、アトピー性皮膚炎と乾癬患者の急性期の皮膚病変にAhRが高発現していることを示しており、AhR経路は特に乾癬で活性化されることを示している。また、正常ヒト表皮ケラチノサイトにおいて、AhR経路の活性化は、炎症性サイトカインの発現を増加させていることを示した。


冬野 洋子 2014/06/30

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