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The dioxin receptor has tumor suppressor activity in melanoma growth and metastasis.

Carcinogenesis. 2013 Aug 8.

【要旨】

 著者らはAhRが腫瘍間質相互作用に関係しており、腫瘍細胞内に発現したときにはメラノーマの成長と転移を抑制するが、間質内に発現したときにはメラノーマの成長と転移を促進することを明らかにした。


AhRが欠乏しているB16F10 メラノーマ細胞をAhR+/+ マウスに注入するとメラノーマの原発腫瘍が拡大し肺転移を引きおこした。しかしAhR-/- マウスに注入したときはそのような変化はおこらず、またAhR+/+ マウスの間質にAhR-/-線維芽細胞と一緒に注入した場合もおこらなかった。反対に構成的活性状態にあるAhRを発現しているB16F10 メラノーマ細胞は、どのようなAhR遺伝的背景でも腫瘍形成を縮小し侵襲性を弱めた。メラノーマ細胞の中のAhRは転移や浸潤を減らし、癌幹細胞様細胞の数を減少させ、β1インテグリンとカベオリン1の発現量を変えることで癌抑制性に働いている。


ヒトの細胞においてもAhRを高く発現しているメラノーマ細胞はマウスと同様に転移と浸潤を減らした。さらにヒトのメラノーマと母斑の組織とを比較するとメラノーマではAhRの発現が少なかった。


メラノーマ細胞の中でノックダウンされているAhRが最大限に腫瘍を拡大させ転移をおこすには間質でのAhRが必要である。AhRはメラノーマの分子マーカーになりうるし、腫瘍と間質の両方の活動性を考慮する必要がある。


里村 暁子 2013/11/08

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