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Discovery of a AHR pelargonidin agonist that counter-regulates Ace2 expression and attenuates ACE2-SARS-CoV-2 interaction

Ace2発現を制御し、ACE-SARS-CoV-2間の相互作用を弱めるAHRペラルゴニジンアゴニストの発見

Michele Biagioli, Silvia Marchianò, Rosalinda Roselli, Cristina Di Giorgio, Rachele Bellini, Martina Bordoni, Anna Gidari, Samuele Sabbatini, Daniela Francisci, Bianca Fiorillo, Bruno Catalanotti, Eleonora Distrutti, Adriana Carino, Angela Zampella, Gabriele Costantino, Stefano Fiorucci
Biochem Pharmacol. 2021 Jun; 188:114564. doi: 10.1016/j.bcp.2021.114564. Epub 2021 Apr 17.

重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoV-2は、コロナウイルス誘発性疾患(COVID)19の病因である。このウイルスは標的組織のアンジオテンシン変換酵素(ACE)2に結合し、ヒトの細胞に侵入する。ACE2の発現は炎症に反応して誘導される。腸におけるACE2の発現は炎症性腸疾患(IBD)の患者で上方制御されており、腸の炎症が人体へのウイルスの侵入を促進する潜在的なリスクを示すものである。腸においてACE2発現を制御するメカニズムはよくわかっていないこと、SARS-CoV-2に対する治療法が必要であることから、我々は腸の炎症モデルにおいて、天然フラボノイドがACE2の発現を制御するかどうかを調べることにした。

これらの研究結果は、ペラルゴニジンがin vitroで芳香族炭化水素受容体(AHR)を活性化し、高脂肪食や腸の制御抑制因子であるTNBSへの慢性的な暴露によって引き起こされる腸の炎症をAhR依存的に改善することを明らかにした。これら2つのモデルでは、腸の炎症の増強にAce2のmRNA発現の上昇が関連していた。腸でのAce2のmRNAレベルは、Tnf-αのmRNAレベルと直接的に関わっていた。分子ドッキング法によって、ペラルゴニジンがSARS-CoV-2スパイクタンパクの受容体結合ドメインの脂肪酸結合部に結合することがわかった。

In vitro研究では、ペラルゴニジンがACE2に対するSARS-CoV-2スパイクタンパクの結合を有意に減らし、濃度依存的にSARS-CoV-2の複製を減少させることを示した。要約すると、天然フラボノイドには腸の炎症を低下させ、炎症をおこした腸でAhR依存的にACE2の誘導を減弱させる可能性があることを我々は示した。



村田真帆 2021/08


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