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Malassezia‐derived aryl hydrocarbon receptor ligands enhance the CCL20/Th17/soluble CD163 pathogenic axis in extra‐mammary Paget's disease.
マラセッチア由来のAHRリガンドは乳房外パジェット病においてCCL20/Th17/soluble 163 axisを増強する。

Yota Sato1, Taku Fujimura, Kayo Tanita et al.
Experimental Dermatology. 2019;28:933–939. DOI: 10.1111/exd.13944

マラセッチア酵母は、慢性皮膚炎の病態生理において、特にアポクリン領域における局所免疫を、AHRを介してTh2/Th17の方向へシフトさせる役割を有する。乳房外パジェット病とは、アポクリン由来の腺癌であり、マラッセチア酵母やその代謝物とは関連性はなく、乳房外パジェット病の典型的な発症部位は環境物質に曝露される部位でもない。

本研究では、a)ヒト表皮細胞においてマラセッチア代謝物は免疫調節効果を発揮するか、特にIL-17と関連するサイトカイン・ケモカイン(IL-23, IL-36γ, CCL20)の発現に主眼を置いて行った、b)EMPDの病変部でもこれらのサイトカイン・ケモカインが発現するか、c) これらのサイトカイン・ケモカインによって腫瘍関連マクロファージが活性化されるか、について検討した。

ヒト表皮細胞においてマラセッチア代謝物はCYP1A1, CCL20, IL-36γの発現を増強させた。EMPDの病変部における表皮は、CYP1A1とCCL20を発現していた。さらに、EMPDの腫瘍細胞であるPaget細胞はCCL20とIL-23を発現していた。IL-17細胞はPaget細胞に隣接する形で分布していた。健常人と較べて、EMPDの患者では血清中のsoluble 163, CXCL5, CXCL10, CCL20のレベルが高かった。さらに、EMPDの切除によってsoluble 163の血清レベルは優位に低下した。

これらの結果から、EMPDの発症には、表皮細胞におけるAHRによって制御されたシグナリングとRANKLによって誘導されるTh17細胞と腫瘍関連マクロファージの浸潤が関与する可能性が示唆された。



辻 学 2019/08


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