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Vemurafenib acts as an aryl hydrocarbon receptor antagonist: Implications for inflammatory cutaneous adverse events
ベムラフェニブはAHR antagonistとして働く:有害事象としての皮膚炎への関与について

Heike C. Hawerkamp, Andreas Kislat, Peter A. Gerber et al.
Allergy. 2019;00:1–12. DOI: 10.1111/all.13972

背景: 最近、BRAF阻害薬であるベムラフェニブは進行期の悪性黒色腫の治療として確固たるものとして確立された。しかしながら、その有益な効果にも関わらず、ベムラフェニブはしばしば有害事象として皮膚炎を生じ、これによって患者のQOLは低下し、治療に用いるベムラフェニブの減量・中断に繋がることがある。これまでにベムラフェニブによって誘導される皮膚炎のメカニズムについてはほとんど分かっていない。

方法: 本研究では、免疫染色、RT−qPCR、フローサイトメトリー、リンパ球活性化試験、タンパク相互作用の分析を用いた。

結果: In vitroの実験系で、ベムラフェニブは、AHRシグナルを阻害し、それによって炎症性のサイトカイン(TNF)やケモカイン(CCL5)の発現を誘導した。In vivoの実験系でも同様に、ベムラフェニブはCYP1A1の発現の誘導を阻害し、炎症に関する遺伝子発現を誘導した。さらに、ベムラフェニブによる皮膚炎を生じた症例では、リンパ球活性試験において、ベムラフェニブに特異的なT細胞が存在しないことが示された。

結論: 我々は、ベムラフェニブがAHRシグナルを阻害することによって炎症反応をさらに増強することを明らかにした。我々の発見は、皮膚の炎症におけるAHRの中心的な役割を理解することに寄与すると考えられ、さらにAHRアゴニストがベムラフェニブによる皮膚炎に対して治療効果がある可能性を示唆した。



辻 学 2019/07


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