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Endocrine aryl hydrocarbon receptor signaling is induced by moderate cutaneous exposure to ultraviolet light.
皮膚への紫外線曝露によって内分泌的なAHRシグナルが誘導される。

Babak Memari, Loan Nguyen-Yamamoto, Reyhaneh Salehi-Tabar et al.
Sci Rep. 2019 Jun 11;9(1):8486. doi: 10.1038/s41598-019-44862-4.

太陽からの紫外線曝露と免疫の関係は古代ギリシャの日光療法にさかのぼる。皮膚は紫外線に感受性の発光団を有し、日光へ曝露されるとビタミンD3といった内分泌系に働きかける物質を産生する。今回、我々は、環境センサーであるAryl Hydrocarbon Receptor (AHR)の働きについて研究を行なった。

AHRはリガンドによって活性化されることによって転写因子として働く。AHRのリガンドには内因性のもの、食物由来のもの、環境物質由来のものがある。In vitroの実験で、細胞を最低紅斑量のUVBに15分−30分曝露したところ、AHRの核内移行が誘導され、すぐにAHRの特異的なDNAへの結合と標的遺伝子(CYP1A1)の発現の誘導が認められた。さらに、UVBを30分照射したマウスの血清でマウス線維芽細胞を刺激したところ、CYP1A1の発現の誘導が認められ、この現象はAhrが欠損したマウス線維芽細胞では発現が認められなかった。また、UVBを15分照射したマウスでは照射後3−6時間後において、血液・末梢組織・消化管においてCYP1A1の発現の誘導が認められた。

これらの結果から、マウスにおいて皮膚への最小紅斑量のUVB照射は、様々な末梢組織における急速なAHRシグナルの活性化を誘導することが明らかとなった。したがって、中等度の太陽への曝露はAHRを介して、免疫を内分泌調整することが示唆された。



辻 学 2019/06


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