ステロイド外用薬が世界中で使用されるようになって50年以上の歴史があります。ステロイドの「効用」と「副作用」は十分に知れわたっているため、その意味ではむしろ安全に使用できる薬の1つといえます。注射や飲み薬は全身に作用するため全身性の副作用がでますが、塗り薬は皮膚の患部に直接作用するため、皮膚から吸収されても血中に入る量はごくわずかです。アトピー
性皮膚炎の患者さんの日常生活におけるステロイド外用薬の使用量を調べたものが表1です。この程度の通常の使用量では全身性の副作用はでません。塗り薬による副作用の多くは、塗った皮膚局所に対するものです。皮膚に対する副作用はステロイドの副作用のなかでも軽い副作用に分類され、「薬の塗布部分で毛が増える」、「皮膚が赤くなる」、「毛細血管が拡張する」、「皮膚がややうすくなる」などがあります。そのほかに、「にきびの悪化」、「かぶれ」、「とびひ、みずむし、ヘルペス、ミズイボがまれに悪化」などがあります。「ステロイド外用薬を塗ると肌が黒くなる」という人がいますが、ステロイドは皮膚の色素産生を抑えるため、肌の色はむしろ白くなります。アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症ですから、ちょうど日焼けの炎症が治ると色素沈着が起こるように、アトピー性皮膚炎も炎症がおさまった後は色素沈着が起こります。これがステロイドの副作用と誤解されているようです。
実際の副作用の頻度を表2に示しました。乳幼児では、表1のような使用量の範囲内では副作用はとても少ないことがわかります。年長になればなるほど、それまでのステロイド外用薬の使用が累積されるため、副作用の頻度も高くなります。ただし、なかには副作用がでない人もたくさんいます。
表1:ステロイド軟膏の使用量調査 |
6ヶ月間の90%使用量 (アトピー性皮膚炎患者の90%が6ヶ月間で使用している量) |
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2歳未満 |
2歳以上13歳未満 |
13歳以上 |
患者数 |
210例 |
546例 |
515例 |
顔面 |
2本程 |
3本程 |
7本程 |
体全体 |
18本程 |
27本程 |
61本程 |
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(1本5gチューブとして) |
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表2:ステロイド外用薬の局所性副作用 |
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2歳未満 |
2歳以上13歳未満 |
13歳以上 |
頬部の血管拡張 |
0% |
2.3% |
13.3% |
肘窩の皮膚萎縮 |
1.5% |
5.2% |
15.8% |
膝窩の皮膚萎縮 |
1.9% |
4.1% |
9.8% |
ざ瘡・毛嚢炎 |
0% |
1.3% |
8.2% |
多毛 |
0.5% |
1% |
2.7% |
細菌感染症 |
1.4% |
2.1% |
2.5% |
真菌感染症 |
1.9% |
0.6% |
1.2% |
酒さ様皮膚炎 |
0% |
0.4% |
3.1% |
接触皮膚炎 |
0% |
0.4% |
0.8% |
皮膚線条 |
0% |
0% |
1% |
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