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Potential involvement of oxidative stress in induction of neurodegenerative diseases: Actions, mechanisms and neurotherapeutic potential of natural antioxidants.

George Laylson da Silva Oliveira et al. African Journal of Pharmacy and Pharmacology. 8(25); 685-700,2014

【要 旨】
 酸化ストレスは多くの病気に関係していますが、神経変性疾患などの中枢神経系においても注目すべき役割を果たしていることが報告されています。そのため、神経変性疾患に対して抗酸化作用物質の治療応用を目的とした研究も行われています。

 アルツハイマー病では酸化ストレスがミトコンドリアにおけるATPの産生への影響を介して病気の進行に関わっています。パーキンソン病では環境中の毒素やその他の要因で酸化ストレスがもたらされ、そのストレスがミトコンドリアDNAの変異と関連し発症につながっている機序も報告されています。ハンチントン病の一部の病型ではミトコンドリアDNAの修復に問題があり、酸化ストレスが関係している可能性があります。 統合失調症に関係のあると考えられているドパミンの産生代謝経路においても酸化は重要な過程であり、酸化ストレスが適切な産生代謝機序を妨げている可能性も言われています。筋委縮性側索硬化症(ALS)では活性酸素を除去する酵素をコードしている遺伝子に変異が認められることがあり、この変異はミトコンドリアの機能低下を起こす可能性があります。

 近年、抗酸化作用は悪性腫瘍、糖尿病、心血管病、神経変性疾患の予防や治療における重要性が高まってきています。ビタミンC,A,E,B6は in vitro においても in vivo においても活性酸素の除去に特に有効であり、マウスを用いた実験ではアルツハイマー病などの神経変性疾患の進行に効果があるのではないかという報告がされています。
 今後、抗酸化作用を持つ物質をどのような形で臨床応用していくかについても更なる研究が必要だと考えられます。

【アセスメント】
 ダイオキシン類も酸化ストレスの原因物質の一つです。油症患者さんに多く認められる症状や疾患には酸化ストレスとの関係が疑われるものがあります。
 この論文は総説ですが、酸化ストレスが神経系に及ぼす影響について疾患ごとの病態、病理、分子生物学的な側面と酸化ストレスとの関連、および酸化ストレスに対する抗酸化作用が期待されるビタミン類が検討されています。
 油症患者さんも含め、酸化ストレスのリスクに対する診療や研究に大いに参考になるものと考えられます。



小屋松 淳 2017/04/28


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