Journal Club

Lce1 family members are Nrf2-target genes that are induced to compensate for the loss of Loricrin.

Ishitsuka Y, et al. J Invest Dermatol 2016 Aug 136(9): 1656-63.

背景
ロリクリン 1) は角化細胞の周辺帯 2) を構成する主要蛋白である。ロリクリン遺伝子欠損(LKO)マウスは、胎児期に周辺帯が障害され、皮膚透過性は亢進しているが、出生時の表現型は野生型マウスとそれほど変わらない。NF-E2-related factor 2 (NRF2)/ Kelch-like ECH-associated protein 1 (KEAP1)は抗酸化機構のシグナル経路を担う転写因子である。
筆者らのこれまでの研究において、羊水が胎児期の皮膚のNRF2を活性化し、その標的遺伝子であるSprr2dSprr2hの転写亢進、蛋白発現を増加することを見出している。こうして、LKOマウスでも周辺帯の発現はSPRRに代償されていると考えられる。また、プロテオーム解析により、LKOマウスではSPRR以外の周辺帯構成蛋白の発現も増加していた。


要旨
筆者らはロリクリン、SPRR 3) と似てグリシン、セリンに富むlate cornified envelop 1(LCE1)蛋白もLKOマウスの周辺帯を代償しているのではないかと仮説をたてた。
LKOマウス表皮では顆粒層上層から角層にかけてLCE1蛋白の発現が増強していた。さらに、免疫電顕にてLKOマウス表皮周辺帯内にLCE1が強く発現しており、ロリクリン欠損による周辺帯不全形成を代償しているのが確認された。興味深いことに、LKOマウス表皮細胞の核内にNRF2が強く染色され、NRF2シグナルが活性化していること、さらにLce1Sprrと同様にNRF2の標的遺伝子であることも確認された。
この研究により周辺帯は構成する多種の蛋白が互いに相補するように発現して維持されていること、その発現はNRF2により制御されていることが明らかになった。


キーワード:
1) ロリクリン:周辺帯の70%を構成する蛋白。
2) 周辺帯(cornified envelop):角化細胞が終末角化する過程で細胞膜を裏打ちするように生成される
  不溶性の強靭な構造物。
3) SPRR(small proline-rich proteins):周辺帯の構成蛋白の一つ。



三苫 千景 2017/04/04


閉じる