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ヒト樹状細胞におけるTLR4誘導性の寛容の表現型におけるIDO-AHR pathwayの役割について

Salazar F, et al. Scientific Reports 2017; 7: 43337 DOI: 10.1038/srep43337

感染症に対する防御機構において、炎症をコントロールすることは大切であり、炎症が持続するとかえって組織障害を生じてしまう。樹状細胞は炎症と抗炎症反応の両方を促進する特有の能力を有する。

樹状細胞による免疫抑制反応に関与する重要な機構の1つとして、トリプトファン代謝酵素であるindoleamin 2,3-dioxygenase (IDO) の発現が知られている。IDOは健常な状態と病的な状態では異なる働きをするが、ヒト樹状細胞がエンドトキシンによって誘導される寛容においてIDOがどのような働きをするのかは一定の見解を得ていない。
我々は、エンドトキシンによって誘導される寛容においてIDOがDCの表現型・機能を形成する上でどのような役割をするのか検討した。LPSによってTLR4を刺激したところ、IDOとaryl hydrocarbon receptor (AHR) の発現が高くなることを明らかにした。また、このLPSによる刺激はDCにおいて免疫寛容の表現型を誘導し、IL-10・PD-L1/L2を高く発現しており、これらは部分的にIDO依存性であった。さらに、我々は、LPSによる刺激を受けたDCにおいてAhR-IDO pathwayが非古典的なNF-kB pathwayの活性化に必須であることを明らかにした。

これらの結果は、ヒト樹状細胞がTLR4誘導性の寛容の表現型となるメカニズムについて新たな知見であり、慢性的な炎症と寛容の誘導・沈静に関して、より一層の深い理解の一助となると思われる。



辻 学 2017/03/06


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