Journal Club

The aryl hydrocarbon receptor AhR links atopic dermatitis and air pollution via induction of the neurotrophic factor artemin

アリルハイドロカーボンレセプターAhRは神経栄養因子arteminの誘導を経てアトピー性皮膚炎と大気汚染に関連している

Hidaka T, et al. Nat Immunol, 2016 Jan; 18(1): 64-76.

 アトピー性皮膚炎は大気汚染との関連性が世界中で言われている。汚染物質に含まれる様々な有機成分が転写因子AhRを活性化する。筆者らは、ケラチノサイトが持続的に活性化AhRを発現し、アトピー性皮膚炎様の表現型を呈するAhR-CAマウスを作成した。

 このマウスを用いて、まず組織の免疫染色で炎症性サイトカイン(前炎症性のTslp, IL18、Th2型のIL33, IL4, IL4a, IL13, Ccl5)が上昇していること、Th2細胞が環境抗原に感作されることでこのネズミにatopic marchを引き起こすことを、気道抵抗性や組織染色から証明した。またこれはシクロスポリンA投与で改善することも示した。次に誕生後間もないマウスに爪クリップを装着することで、掻破行動の頻度は変わらないが、TEWLは正常マウスと同様に保たれ、所属リンパ節ではCD4+Tcellの出現改善、IL4, INF-γの出現も抑制されることがわかった。AD関連遺伝子ではIl4のみ低下がみられた。
 続いてかゆみのメカニズムを探るべく掻破行動の観察と神経マーカーを調べたところ、AhRマウスでは持続的な掻破行動がみられ、皮膚において生後2週間から神経マーカーの発現が増加することが示された。またTRPチャネル(=掻痒に関連している)を抑制することで、軽微な刺激に対する反応が抑制されることも証明した。
 さらに神経刺激伝達に続く服作誘導遺伝子の発現を見るために、AhR-CAマウスの新生児表皮でマイクロアレイを施行し、ArtnとEphb2が有意に上昇しており、続いてArtemin中和抗体で軽微な刺激に対する反応性が改善することも示した。

 大気汚染が実際にAhR-CA様の表現型を生み出すかどうかを、表皮でAhrが欠損するマウスを作成し、DEP(ディーゼルから出る)、DMBA、FICZを皮膚に直接塗布したところ、Artn発現の上昇は見られなかった。最後にAhRとartemin軸索がヒトのアトピー性皮膚炎に及ぼす影響を見るため、ヒト皮膚のAhR活性とartemin発現を分析した。アトピー性皮膚炎患者ではARTNとCYP1A1 (=AhRの指標となる)の発現が相関性をもって有意に上昇していた。

 以上より、掻痒に対して過敏性を引き起こす、表皮の過度な神経支配に責任あるケラチノサイト特異的AhR標的遺伝子である神経栄養因子arteminとしてArtn遺伝子を明らかにした。また、大気汚染を通じたAhRの活性はarteminの発現や偶発運動(=軽微な機械的刺激)、表皮の過度な神経支配や炎症を引き起こすことがわかった。さらに、アトピー性皮膚炎患者の表皮において、AhR活性やARTN発現は積極的に関連しており、ケラチノサイトのAhRは環境刺激を感じ、アトピー性皮膚炎の病態を誘発することを示した。筆者らは、大気汚染が引き起こすAhR活性を介したアトピー性皮膚炎の機序を提案している。


 



大久保 佑美 2016/12/19


閉じる