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The aryl hydrocarbon receptor regulates an essential transcriptional element in the immunoglobulin heavy chain gene Michael J. Wourms, Courtney E.W. Sulentic

Michael J. Wourms, Courtney E.W. Sulentic

Cell immunology 2015 Feb 26;295(1):60-66

【Summary】

 IgH鎖転写には3’IghRR1)を含む様々な調節因子が関わっている。3’IghRRの活性化にはNF-κB、AP-1そしておそらく AhR (aryl hydrocarbon receptor)などを含めた因子が関わっている。
これまでの動物モデルを用いた研究で、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) が、Bリンパ球から抗体産生細胞への分化を抑制し、それにAhRが何らかの役割を果たすことがわかっていた。しかしその正確なメカニズムは不明であった。筆者らの以前の研究で3’IghRRがIgH鎖転写のkey regulatorであることがわかっていた。本研究ではIgを発現しているB cell line(CH12.LX)を用いて、AhRが3’IghRRの重要な調整因子かを明らかにした。

 その結果、以下のことが判明した。
1.(AhRによるシグナル活性を抑制するための)AhR antagonistやAhRノックダウンマウス細胞では野生マウス由来細胞に比べ、TCDD添加時のCYP1A1 蛋白発現量が低下した。
2.TCDD下でγ2bやIgA蛋白発現量は低下するが、AhR antagonist添加されると発現量の低下は抑えられた。
3.野生マウスに比べてAhR産生低下マウス由来細胞(ShAhR12, 11)においては、TCDD添加時にγ2bやIgA蛋白生成の低下が生じなかった。

以上より、AhRが3’IghRR の活性を直接、調整していることが示された。この結果、AhRが3’IghRRのIgH 転写を誘導しようとする能力を抑制し、免疫グロブリンレベルを低下させることが示唆された。さらにAhRに親和性のある食事や薬代謝物、環境中のダイオキシン関連物質が3’IghRR (hs1.2enhancer2))と関連するヒト病気の発症率や重症度を変えうる可能性が示唆された。

【Keywords】

1) 3’IghRR(regulatory region) : 免疫グロブリンIgH鎖をコードする遺伝子において3末端領域側に存在する調整領域。ヒトにおいては、この3’IghRRが様々な自己免疫疾患やB細胞リンパ腫と関連することがわかっている。
2) hs1,2enhancer : 3’Igh regulatory regionの一部分


峯 嘉子 2015/04/03

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