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2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin-Mediated Production of Reactive Oxygen Species Is An Essential Step in the Mechanism of Action to Accelerate Human Keratinocyte Differentiation.

Toxicol Sci. 2013 Mar;132(1):235-49.

【要旨】

塩素ざ瘡は、TCDD暴露で一般に観察されるものであるが、毒性の機序は、十分には理解されていない。
正常ヒト表皮ケラチノサイトを使用して、機能的遺伝子、代謝、生化学的分析を行い、TCDDが媒介する表皮分化の機序を調べた。


TCDDは、染色体1q21領域にあるepidermal differentiation complex (EDC)の発現を40%増加させ、デノボ・セラミド生合成のために必要な遺伝子の発現を75%増加させた。
TCDDによって9種類中の8種類のセラミドの増加することが脂質分析でわかった。
TCDDによりグルコース輸送体SLC2A1の発現低下と解糖系転写産物の発現低下、ピルビン酸を含む解糖中間体の減少が認められ、NADHとクエン酸回路中間体は減少したが、一方NAD(+)は増加した。つまりTCDDによってミトコンドリア機能不全がおこることで活性酸素(ROS)、過酸化水素水の産生が増加した。


AhRアンタゴニストはTCDDによる多くの転写産物の反応やATP産生の減少をブロックした。これはAhRが介していることを示唆している。
TCDDと抗酸化物質やカタラーゼと細胞を共培養することにより、ケラチノサイト周辺帯の形成の促進がブロックされることが示された。
つまりTCDDによるROS産生は、TCDDがケラチノサイト分化を促進するための重要なステップであるといえる。


竹井 賢二郎 2013/04/01

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