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2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin Increases the Expression of Genes in the Human Epidermal Differentiation Complex and Accelerates Epidermal Barrier Formation.

Toxicol Sci. 2011 Nov;124(1):128-37. Epub 2011 Aug 11.

【要旨】
クロルアクネはダイオキシンに曝露された人々によく見られるが、その中毒性のメカニズムはよくわかっていない。

クロルアクネの病理学的特徴は毛包内扁平上皮の過角化、毛包細胞の過増殖・過角化、皮脂を分泌する皮脂小腺の化生性反応である。正常ヒト表皮ケラチノサイトを毛包内ヒト表皮のモデルとして用いたIn vitroの研究で、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)は分化を促進し、filaggrin (FLG)を含めたいくつかの分化前遺伝子の遺伝子発現を増加した。

今回我々は、TCDD活性化aryl hydrocarbon receptor (AHR)が、FLG遺伝子転写開始部位の上流にあるDNAの小断片に結合することを示し、また二つの異物応答配列(XREs)候補のうち一つを含んでいた。二つの想定されるXREsを含んだFLGのプロモーター領域を用いて、レポーターアッセイを行ったところ、FLG mRNAの増加はTCDDによる転写活性に依存するが、XREsを二つとも変異させたら活性化しなかった。

FLGは染色体1番で発見されたヒトepidermal differentiation complex (EDC)の一つであり、我々はTCDDによる制御を確認するため他の18のEDC遺伝子のmRNAを測定した。これらの遺伝子の中で14がTCDDの影響で増加していた。免疫ブロット法で、FLG蛋白と同じく、別の分化前遺伝子の蛋白であるsmall proline rich protein 2がTCDDの影響で増加していた。TCDDの子宮内曝露は、およそ1日でマウス胎児の発達における表皮バリアの形成を促進した。

これらの結果は表皮の透過障壁がTCDD活性化AhRの機能的ターゲットであることを示している。


小池 雄太 2012/4/1

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