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The association of functional polymorphisms in the aryl hydrocarbon receptor (AHR) gene with the risk of vitiligo in Han Chinese populations.

Br. J Dermatol. 2011 Dec 28. [Epub ahead of print]

【要旨】
白斑はメラノサイトの選択的破壊による後天性の脱色素性疾患である。メラニン形成とメラノサイトの増殖・分化の調節には、ダイオキシン受容体(AhR: aryl hydrocarbon receptor)がメラニン形成関連遺伝子の発現を調節することが不可欠である。AhRの遺伝子変異はAhR蛋白とその標的遺伝子に負に作用すると考えられる。したがって筆者らは、AhRの遺伝子多型が上述したメラニン形成関連遺伝子の転写活性に影響を与えることで、白斑の形成に関与しているのではないかという仮説をたてた。

目的:AhRの遺伝子多型と白斑感受性との関連についての検討。

方法:中国の西京医院を受診した漢民族で、それぞれ1000人の白斑の患者群と白斑疾患を持たない年齢と性別を合わせたコントロール群でケースコントロール研究を行った。AhRの遺伝子で、2つの一塩基多型(single nucleotide polymorphisms (SNPs) (rs10249788 and rs2066853))を選び、PCR-制限酵素断片長多型(polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism (PCR-RFLP) )方法を使用して、一塩基多型について検査し、疾患との関連性について検討した。

結果:一塩基多型の一つであるrs10249788では、 TT と CT の遺伝子型 [それぞれ、オッズ比 (OR) 0.59, 95% 信頼区間 (95% CI) 0.38-0.93, P= 0.028 と OR 0.82, 95% CI 0.68-0.98, P= 0.032]で、 白斑発生リスクを統計学的に有意に減らすことが分かった。また、白斑のサブグループ(男性、活動性あり、分節型白斑でない、20歳未満発症)においても同様に白斑発生リスクが統計学的に有意に減っていた。さらに、 (CT+TT)/GG (rs10249788/rs2066853)の遺伝子型 か、 T/G (rs10249788/rs2066853) のハプロタイプの一群においては、白斑の発症率が減っていた [それぞれ、OR 0.57, 95% CI 0.37-0.87, P= 0.009 とOR 0.78, 95% CI 0.64-0.96, P= 0.033]。

結論:AhRの遺伝子のプロモーター領域に位置する一塩基多型の一つ、rs10249788中の、対立遺伝子Tは、中国漢民族における白斑の発症抑制に関連があることが推定できた。


用語
●メラノサイト:メラニン色素を作る細胞。
●遺伝子多型:同じ生物種の集団のうちに遺伝子型の異なる個体が存在すること、またはその異なる遺伝子・
 DNA配列のことをいう。
●一塩基多型(single nucleotide polymorphisms (SNPs):遺伝子のDNA配列上の一塩基の置換(点突然変異)に
 よって生じた多型をさす。
●polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism (PCR-RFLP) method:PCR産物を
 制限酵素で分解し、電気泳動で産物の長さの違いとして検出することにより、多型の有無を判定する方法。
●ハプロタイプ:片親由来で受け継がれる、隣接した一組の遺伝子により決められた表現型。


安川 史子 2012/3/7

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