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Hypertension, cardiac hypertrophy, and impaired vascular relaxation induced by
2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-Dioxin are associated with increased superoxide.

Cardiovasc Toxicol. 2008 December; 8(4):181-193.

【要旨】
疫学的にTCDDへの曝露と心血管系疾患の発生率の増加とは関連が言われているものの(韓国のベトナム帰還兵における健康状態の報告)、そのメカニズムはわかっていない。本報告ではTCDDを亜慢性に暴露させたマウスモデルを使って心血管系疾患の発生について研究を行った。
C57BL/6雄マウスに300ngTCDD/kgまたはコントロールとしてコーンオイルを経胃管的に60日間週3回接種し、血圧、重量測定や組織学的観察による心肥大の有無、腎・心・動脈の活性酸素であるスーパーオキサイド産生またスーパーオキサイドによる大動脈内皮機能への影響などを観察した。
その結果、TCDD曝露群で平均動脈圧はTCDD接種開始後4日目より上昇し、7~10日、25~35日および45~60日の間で有意に上昇していた。またTCDD接種開始60日後における左室+中隔の重量は有意に増加し、組織では求心性心肥大の所見であった。またスーパーオキサイドが腎、心および動脈で有意に上昇していた。さらに、このスーパーオキサイドは大動脈内皮機能を低下させることが、抗酸化作用をもつ物質(tempolやSOD)を用いた実験で示された。
本実験モデルはTCDDによるAhRの持続的な活性化が血圧の上昇と心肥大を引き起こし、それは部分的にはスーパーオキサイドの上昇を介してであろう事をはっきりと証明した。

塚本 美鈴 2011/8/1

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