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2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) poisoning in Victor Yushchenko: identification and measurement of TCDD meabolites

Lancet. 2009 Oct 3;374(9696):1179-85. Epub 2009 Aug 5

【要旨】
1)背景:2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)は非常に親油性が高いので人類では半減期が5〜10年と長く、ほとんど代謝されない。筆者らはVictor Yushchenko(ウクライナ元大統領)が重度の中毒症状を起こした後、TCDDおよびその形態、分布、排泄を調査した。

2)方法:患者(Victor Yushchenko)は2004年12月末、TCDDの中毒症状を起こした。その際の血清TCDD濃度は108000pg/g 脂質体重であり、一般健常人と比較して50000倍以上の濃度であった。筆者らはTCDDとその代謝産物を3年にわたりガスクロマトグラフィー、高速質量分析機を用いて測定した。サンプルは血清、脂肪組織、糞便、皮膚、尿、汗を採取し、異なった有機溶媒で抽出した後に測定した。

3)結果:調査中体外に排出されたTCDDのうち、約60%が全く代謝されていないTCDDであった。さらに調査をしたところ、2つのTCDDの代謝産物①2,3,7-トリクロ-8-ハイドロキシベンゾ-p-ダイオキシンと②1,3,7,8-テトラクロロ-2-ハイドロキシベンゾ-p-ダイオキシンが糞便や血清中、尿中に存在していた。TCDDおよびその代謝産物は異なる経路で排出され、体外へ排出されたTCDDおよび代謝物質のおおよそ98%が上記の物質でしめていることが判明した。

4)解釈:今回のケースは人類でのTCDDおよびその代謝物質を研究する際に基本的な手段・方法として主流の方法であると考えられた。


鍬塚 大 2010/10/01

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