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Plasma levels of polychlorinated biphenyls and risk of cutaneous malignant melanoma: a preliminary study

International Journal of Cancer 2010 Jun 9. [Epub ahead of print]

【要旨】
 PCBやその他の有機塩素系物質(OCC)の暴露により、皮膚悪性黒色腫の危険性が上がるとの疫学的な報告が多数ある。しかしながらこれらの研究は一般的にOCC暴露の生物学的な計量がなされておらず、また悪性黒色腫の主要な環境危険因子として知られる日光暴露の補正ができていない。
 この予備研究では日光過敏と日光暴露量を修正した上で、血清中のOCC残留物と皮膚悪性黒色腫の危険性との関連性を調べた。80人の皮膚悪性黒色腫患者と310人の対照群におけるケースコントロール研究を行った。生涯における日光暴露の情報・色素沈着の変化・日光過敏のデータと共に、血液検体を収集した。患者群と対照群において、14種類のPCB類と11種類の有機塩素系農薬残留物の血清中の濃度を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した。血清中の非ダイオキシン様PCB類(OR=7.02; 95% Cl:2.30-21.43)・いくつかのPCB類・有機塩素系農薬とその代謝産物、それらの血清中の濃度と皮膚悪性黒色腫の危険度との間に強い相関関係が認められた。これらの関係は、日光過敏と日光暴露による影響の補正を行った後にも認められた。
 この研究で調べた検体は2つの別々の研究から得られた検体であり、また皮膚悪性黒色腫患者数が少ないなどの問題点があり、予備的な研究としてとらえている。この研究の結果は、もっと大きな、独立した研究で確認される必要がある。しかしながらこの研究は、UV照射だけでなく他の環境因子も皮膚悪性黒色腫の発生に関与している可能性、また皮膚悪性黒色腫の発生リスクを上げる可能性があるさらなる作用物質の検索が生産的かもしれないということ、を示唆している。


安川 史子 2010/09/09

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