Journal Club

Dioxin-induced up-regulation of the active form of vitamin D is the main cause for its inhibitory action on osteoblast activities, leading to developmental bone toxicity

Toxicology and Applied Pharmacology 236 (2009) 301–309

【要旨】
 ダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin, TCDD)はとりわけ動物の発育過程において骨毒性をおこすことが知られているが、そのメカニズムは解明されていない。 産後一日目に15μg/kgの TCDDを経口投与された母親の母乳を介してTCDDに暴露されたマウスを用いて検討を行ったところ、TCDDは腎臓においてビタミンD1α水酸化酵素(vitamin D1α-hydroxylase)を上昇させ、その結果、血清中の活性化ビタミンDである1,25-dihydroxyvitamin D3を二倍にした。このTCDDの作用は副甲状腺ホルモンの変化によるものではない。ビタミンDは骨の石灰化に影響を及ぼすことが知られている。TCDDに暴露されたマウスでは生後21日目までに脛骨におけるオステオカルシン、collagen type 1、およびアルカリフォスファターゼの遺伝子発現が著しく低下していた。これらのマウスでは、脛骨における石灰化不良、骨芽細胞性の骨形成活性の低下と、増加したビタミンD効果のサインであるFGF-23の増加を伴っていた。骨芽細胞活性に対するこのようなTCDDの重大な影響にもかかわらず、破骨細胞活性に関するマーカーはどれも影響を受けていなかった。
組織形態計測により、骨吸収活性ではなく骨芽細胞活性がTCDDにより影響を受けていることを確認した。TCDDに暴露されたマウスに共通してみられる目立った病変は、皮質骨の骨膜と骨梁に沿った増大して肥厚した類骨を特徴とする、障害された骨の石灰化であった。
これらのデータにより、TCDDにより増加したビタミンDが引き起こす骨芽細胞活性の低下に起因する障害された石灰化こそが、TCDDの骨に対する発育毒性の原因であることが示唆される。

本村 悟朗 2010/07/01

閉じる