Journal Club

Functional and phenotypic effects of AhR activation in inflammatory dendritic cells

Toxicology and Applied Pharmacology; 2010. Mar 27 [Epub ahead of print]

【要旨】
 ダイオキシン受容体であるaryl hydrocarbon receptor (AhR)のTCDDによる活性化は免疫抑制を引き起こす。樹状細胞はT細胞の活性化と分化を決定する鍵となる抗原提示細胞であるが、樹状細胞におけるAhR活性化の影響は完全には分かっていない。著者らはAhRの活性化が樹状細胞の分化を変化させ、機能不全の樹状細胞を作り出すのではないかと推測し、C57Bl/6マウスから骨髄由来の炎症性樹状細胞(BMDCs)を基質かTCDDの存在下で作製し検討した。
 TCDDはBMDCsのCD11cの発現を減弱させたが、MHCクラスⅡ・CD86・CD25の発現を増強させた。TCDDの効果はAhR依存性であったが、dioxin response element (DRE)伝達によるものだけではなかった。同様の効果は6-formylindolo[3,2-b]carbazole (FICZ)と2-(1H-Indol-3-ylcarbonyl)-4-thiazolecarboxylic acid (ITE) (どちらも自然界のAhRのリガンドである)でも確認された。TCDDはLPSやCpG刺激によるBMDCsからのIL-6やTNF-α産生を増加させたが、NO産生は減少させた。
またTCDDはCpG刺激によるBMDCsからのIL-12p70産生を減少させたが、IL-10の分泌には影響を及ぼさなかった。TCDDはLPSやCpGによるBMDCs 中のNF-kB p65発現を抑制させたが、RelB量増加傾向を引き起こした。TCDDによるAhRの活性化は可溶性と粒子型の抗原のBMDCsによる取り込みを変化させた。
AhRの活性化に引き続いておこる制御性T細胞の発生にはindoleamine-2,3-dioxygenase (IDO) とTGF-3誘導が関与している。TCDD は基質刺激と比較するとBMDCs内のIDO1, IDO2やTGF-3遺伝子発現量を増加させた。制御性因子が誘導されているにも関わらず、TCDDによって刺激を受けたBMDCsは抗原特異的T細胞の活性化を抑制できなかった。
 以上よりAhRの活性化は、炎症性DCsとT細胞との相互作用に影響を及ぼさず、炎症性DCsの分化と先天的な機能を直接変化させることができると考えられる。

安川 史子 2010/05/09

Key words:

  • Dioxin response element: 活性化し核内に移行したAhRが結合するDNAの領域。
  • LPS, CpG: 病原性微生物の構成成分で樹状細胞を活性化させる。
閉じる