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Effect of 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin on scratching behavior in mice

International Immunopharmacology 2009 Dec 5. [Epub ahead of print]

【要旨】
本論文では痒み因子に感度の高く、経時的研究に適しているヘアレスマウスにて、掻破行為における2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)の効果を検討している。TCDDはよく知られた環境汚染物質であり痒みを伴った皮膚病を引き起こす。そこで本論文ではTCDDが痒みを誘発するかどうか検討を行っている。TCDD単独の経口投与では掻破行為の増加は認められず、一方、蒸留水やアセトン、オリブ油を混ぜ合わせたものでは掻破行為の著しい増加を認めた。さらに、皮膚における神経成長因子が著明に増加していた。ヒスタミンH1受容体拮抗薬であるクロルフェニラミン、化学伝達物質遊離阻害剤であるトラニラストやヒスタミンH1受容体拮抗薬であるオロパタジンの単回投与では、アセトン、オリブ油を混ぜ合わせたTCDDによって引き起こされた掻破行為に対し効果は認められなかった。7日間の反復投与において、クロルフェニラミン、トラニラストでは掻破行為に対して効果なかったが、オロパタジンは著明に掻破行為を抑制した。さらに、オロパタジンのみが皮膚における神経成長因子を著しく抑制した。
これらの結果より、TCDDは痒み因子としてではなく、ささいな外付けの刺激とともに敏感肌を引き起こすと結論づけられた。さらに、皮膚の成長因子を減少させる薬剤がこの掻破行為の抑制につながると考えられた。


穐山雄一郎 2010/2/2

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