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Staphylococcus aureus Activates the Aryl Hydrocarbon Receptor in Human Keratinocytes

黄色ブドウ球菌はヒト表皮細胞のアリル炭化水素受容体を活性化する

Eva-Lena Stange, Franziska Rademacher, Katharina Antonia Drerup, Nina Heinemann, Lena Möbus, Regine Gläser, Jürgen Harder
J Innate Immun. 2022;14(6):582-592. doi: 10.1159/000524033. Epub 2022 May 2.

黄色ブドウ球菌は,様々な感染症を引き起こす重要な病原体であり,皮膚感染症では最も分離頻度の高い菌である。皮膚の最初のバリア細胞である表皮細胞(ケラチノサイト)は、サイトカインや抗菌ペプチドなどの防御因子を放出することにより、黄色ブドウ球菌に反応する。ケラチノサイトに発現するToll様受容体やNOD様受容体などのパターン認識受容体が黄色ブドウ球菌を感知することが報告されているが、黄色ブドウ球菌とケラチノサイトの相互作用のメカニズムはまだ明らかにされていない。

本研究では、黄色ブドウ球菌がアリル炭化水素受容体(AhR)の応答遺伝子であるCYP1A1およびCYP1B1の遺伝子発現を誘導することを報告する。さらに、黄色ブドウ球菌によるAhRの活性化は、AhR遺伝子レポーターアッセイによって確認された。AhRの活性化は黄色ブドウ球菌が分泌する2 kDa以下の因子によって媒介された。トランスクリプトーム解析とリアルタイムPCR解析により、IL-24、IL-6、IL-1βがAhR依存的に誘導されるサイトカインであることが確認された。また、3次元培養皮膚でAhRを阻害したところ、生きた黄色ブドウ球菌の刺激でIL-24、IL-6、IL-1βの誘導にAhRが重要な役割を果たすことが確認された。

これらのことから、AhRは皮膚病原体である黄色ブドウ球菌を感知する新たな受容体であることが明らかになった。



山村 和彦 2022/12


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