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Mortality rates among trichlorophenol workers with exposure to
2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin.

Am J Epidemiol. 2009 Aug 15;170(4):501-6. Epub 2009 Jun 26.

【要旨】
米国ミシガン州のミッドランドにおいて、trichlorophenol生産に従事することによりダイオキシンに曝露した1615人について、暴露後の死亡率の増加の有無も含めて調査を行った。
ダイオキシンレベルは従事者の血清で測定した。1942年から2003年の間、身体状況を経過観察し、ダイオキシン曝露による死因別死亡率と傾向を評価した。

全癌(標準化死亡比=1.0, 95%信頼区間:0.8, 1.1)、肺癌(標準化死亡比=0.7, 95%信頼区間:0.5, 0.9)、非悪性呼吸器疾患(標準化死亡比=0.8, 95%信頼区間:0.6, 1.0)は、予期していたレベルより低かった。白血病(標準化死亡比=1.9, 95%信頼区間:1.0, 3.2)、非ホジキンリンパ腫(標準化死亡比=1.3, 95%信頼区間:0.6. 2.5)、糖尿病(標準化死亡比=1.1, 95%信頼区間:0.6, 1.8)、虚血性心疾患(標準化死亡比=1.1, 95%信頼区間:0.9, 1.2)は、予測値よりも僅かに高い傾向にあった。

上記の疾患群においては、ダイオキシン曝露と死亡率との間に、有意な因果関係は認められなかった。しかし、4名の軟部組織肉腫(標準化死亡比=4.1, 95%信頼区間:1.1, 10.5)による死亡率はダイオキシン曝露者に有意に高かった。
ただし死亡数が少ないこと、診断と疾病分類コードが不確かであることから、この解釈は確定的なものではない。軟部組織肉腫という例外を除いては、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinへの曝露と疾患増加とのリスクとは認めなかった。


濵田直樹 (2009/12/1)

Key words:

  • 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin; TCDD
  • 標準化死亡比;基準死亡率(人口10万対の死亡数)を対象地域に当てはめた場合に、計算により求められる期待される死亡数と実際に観察された死亡数とを比較したもの。
  • 95%信頼区間;95%信頼区間とは、母集団全体の値がその区間に存在する確率が95%である区間のこと。その下限値を下限信頼限界、上限値を上限信頼限界という。


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