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Metformin inhibits IgE- and aryl hydrocarbon receptor-mediated mast cell activation in vitro and in vivo.

Wang HC et al. Eur J Immunol. 2018 Sep 22. doi: 10.1002/eji.201847706.

背景
メトホルミンは肝臓での糖生成を抑制し、糖の取り込みを促進する経口抗糖尿病薬であるが、MAPKを介した抗炎症作用が報告されており、喘息と糖尿病を合併した患者に投与することで喘息治療の効果が示唆されている。
AhRは肥満細胞におけるカルシウム伝達、小胞体、ミトコンドリアストレス反応を調整しておりS1P(スフィンゴシン1リン酸)の直接の酸化を抑制し、またS1Plyaseの酸化による酵素活性の低下を促進することでS1Pを増加させる。S1Pは肥満細胞と気道平滑筋収縮の反応にも関係している。


要約
● メトホルミンはFICZによって増強されるマウスBMMCs(骨髄由来の培養肥満細胞)のOVA抗原特異的IgE結合による脱顆粒を抑制し、さらにIL-13, TNF-αの分泌も抑制した。またメトホルミンはIgEによる肥満細胞のS1P産生も抑制した。
● PCA(受動的皮膚アナフィラキシー)モデルマウスをOVA抗原特異的IgEに感作させ、エバンスブルーの血管外漏出を測定したところメトホルミン単独ではPCAは軽減されず、FICZとメトホルミン併用群では有意にPCAを軽減した。
● OVA感作されたマウスBMCCsにおいてメトホルミンはOVA刺激による肥満細胞内のカルシウム濃度の上昇を単独では変化させなかったが、FICZを添加した事による細胞内カルシウム濃度の上昇は阻害した。また感作も刺激もしていない肥満細胞はメトホルミンで前処理することでFICZによって誘導される細胞内カルシウム濃度の上昇やSTAT3のリン酸化が抑制された。
● メトホルミンはFICZによるROSの増加を抑制し、FICZによって低下したS1Plyaseの活性を上昇させ、その結果FICAによるS1Pの細胞内濃度の上昇を打ち消した。
● メトホルミンはFICZ, IP, TCDDにおいてAhRの標的遺伝子の転写をブロックした。またAhRシグナルのフェーズ1酵素であるcyp1b1の遺伝子発現も低下した。
● メトホルミンはAhRやIgEに関連した肥満細胞の活動を抑制し、ROSやS1Pの産生を抑制する。AhRのリガンドによるAhR標的遺伝子の発現をブロックできる可能性がある。



永江 航之介 2018/10/3


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