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Aryl hydrocarbon receptor (AhR) dependent regulation of pulmonary miRNA by chronic cigarette smoke exposure.

Rogers S, et.al. Sci Rep. 2017 Jan 12; 7: 40539. doi: 10.1038/srep40539.

(論文要旨)
 Aryl hydrocarbon receptor(AhR)はダイオキシン類を含む有害物質への生体反応において重要な役割を果たしていますが、有害物質に対するAhRの働きに比べて、その生理的な役割についてはまだ十分に分かっていません。


 AhRはほぼ全身部位にわたって存在しますが、肺は特に多く認められる部位の一つです。近年、AhRがmicroRNAの制御も含めた機序により、喫煙に関連した肺における炎症、酸化ストレス、アポトーシスに抑制的に働いている可能性が報告されています。しかしながら、吸入した有害物質に対する肺でのAhRのmiRNA制御機構についてはよく分かっていません。


 今回、AhR + / - マウスとAhR - / - マウスを4週間の喫煙環境下におき、PCRによって肺におけるmiRNAの発現を調査しました。AhR - / - マウスはAhR + / - マウスに比べて癌に関連するmiR-96を含むmiRNAの発現が高く認められましたが、AhR制御タンパクであるHuRとcycrooxygenase-2(COX-2)の発現には差を認めませんでした。miR-96の標的と推定されている抗酸化遺伝子であるsulfiredoxin 1(Srxn1)はAhR + / - マウスにおいて喫煙による発現の上昇を認め、FOXO3aは両マウスともに喫煙による発現の上昇を認めましたがAhR + / - マウスの方がAhR - / - マウスより強く発現していました。


 これらの結果はAhRがmicroRNAの制御も含めた機序により、肺においては喫煙に伴う炎症、酸化ストレス、アポトーシスに抑制的に働いている可能性を支持するものですが、既知のAhRの働きだけでは説明がつきません。しかしながら、AhRは肺におけるmiRNAの発現調整に重要な役割を果たしており、これらのmiRNAの働きを解明することで、呼吸器系におけるAhRの未知の働きが明らかになることが期待できます。


(アセスメント)
 ダイオキシン類の影響を考えるうえでAhRの作用は必ずしも望ましいものではありません。しかしながら、AhRの生理的作用という異なる視点を持つことで、新たなアプローチのヒントにつながる可能性があると思います。




小屋松 淳 2018/2/22


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