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Effect of Keishibukuryogan, a Japanese Traditional Kampo Prescription, on Improvement of Microcirculation and Oketsu and Induction of Endothelial Nitric Oxide: A Live Imaging Study..

Tomita T, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2017; 2017: 3620130. doi: 10.1155/2017/3620130.

背景:
桂枝茯苓丸は古くからある漢方方剤で、駆お血剤として血流が滞っている病態の治療薬として処方される。これまでに血小板凝集抑制、血管拡張作用の報告があるが、桂枝茯苓丸による生体内の血流変化を可視的に評価し、その機序を検証した研究はない。


目的・方法・結果:
この研究では、実験動物に桂枝茯苓丸を投与し、末梢血管の血流の変化をライブイメージングで評価した。また、NO1)と特異的に反応する蛍光色素DAF-22)を使ってその機序を検証した。 その結果、桂枝茯苓丸を投与したマウスの皮下組織の動脈は投与前と比して60分をピークに拡張し、90分まで持続した。血流速度も増加した。桂枝茯苓丸を投与したラット腸間膜動脈においても、“お血”の主たる病態である赤血球凝集が緩和された。また、血管内皮細胞でDAF-2の検出量が増えた。桂枝茯苓丸で増加したDAF-2の蛍光強度はL-NMMA3)をともに投与すると減少したため、桂枝茯苓丸によりNO産生が増加したことが裏付けられた。DAF-2は腸間膜動脈全体に検出されたが、とくに血管の分枝部に多かった。


結論:
桂枝茯苓丸を投与すると、実験動物の動脈の血流改善がみられ、血管内皮細胞においてNO産生が増加した。


Keywords;
1) NO:一酸化窒素。血管内皮細胞が産生し、血管平滑筋細胞を弛緩させ、血管拡張作用を発揮する。
2) DAF-2 DA (Diaminofluorescein-2 diacetate):NO検出用蛍光試薬。DAF-2 DAは細胞膜を透過し、
  細胞質内のエステラーゼにより加水分解され細胞膜を透過しにくいDAF-2に変化する。
  DAF-2のアミノ基がNOと反応し、可視光により励起し蛍光顕微鏡下で蛍光を発色する。
3) L-NMMA: NO合成酵素阻害剤



三苫 千景 2018/1/29


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