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Arylhydrocarbon Receptor (AhR) Activation in NCI-H441 Cells and C57BL6 Mice; Possible Mechanisms for Lung Dysfunction.

Am J Respir Cell Mol Biol. 2009 Apr 16. [Epub ahead of print]

【要旨】
Arylhydrocarbon receptor (AhR)は芳香族化合物と結合し、シトクロムp450や炎症性サイトカインの誘導といった分子カスケードを開始させる働きを持つ。
多くの吸入環境毒素化合物は最初にAhRと結合することでこれらの炎症性経路を活性化するのではないかと、筆者らは仮定した。筆者らはクララ細胞のセルラインであるNCI-H441細胞をAhRのアゴニストTCDDで刺激し、AhRの活性化がシトクロムp450の発現と炎症のマーカーの両方を発現することを示した。同時に、ムチン5ACの発現が増強することも見いだした。同様の結果は、都市粉塵微粒子でNCI-H441細胞を処理したときにも認められた。

ムチン5ACの発現は、COX-2やIL-1bの発現の増強と関係しており、これら二つのサイトカインは、AhRを介するムチン産生のひとつの経路である可能性がある。 また筆者らは、ムチン5AC産生の上昇は、クララ細胞自体がムチン産生を増やした結果というよりも、クララ細胞がムチン産生細胞へ分化した結果である、と仮定した。 この理論は、細胞の形態的な変化からも、CCSP/CC10の発現が減少していることからも支持される。
C57BL/6マウスにおいて、TCDD刺激は、全肺における炎症性サイトカイン、ムチン5AC、マトリックスメタロプロテアーゼを上昇させる。これらの変化は、AhRシグナルが抑えられたマウスでは認められない。これらの結果は、気管支炎や気管支喘息、末梢気道病変や線維化の発症とも関係していると考えられており、更にAhRの活性化と、肺損傷の進展における分子的環境の産生に関わっていると考えられる。


2009年7月17日 濵田 直樹

Key words:

  • クララ細胞:終末細気管支,呼吸細気管支に存在する粘液分泌細胞の一つ。
  • COX-2 (cyclooxigenase-2):アラキドン酸の代謝酵素の一つ。炎症反応の進展に関与する。
  • CCSP (Clara cell secretory protein):Clara細胞特異的な分子マーカー。


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