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Influence of food polyphenols on aryl hydrocarbon receptor-signaling pathway estimated by in vitro bioassay.

Phytochemistry 69 (2008) 3117-3130

Aryl hydrocarbon receptor (AhR)はダイオキシン類などの環境汚染物質と結合すると,核内へ移行しxenobiotic responsive elements (XRE)と呼ばれるDNA上の領域に結合しCYP1A1などの代謝酵素遺伝子の発現を誘導する。一方ダイオキシン類の癌原性,免疫毒性もAhRが仲介していることがわかっている。近年植物由来のポリフェノールの中に,AhRのリガンドとして作用する化合物が存在することが明らかになってきた。著者らはポリフェノール化合物のAhRに対するアゴニスト作用,アンタゴニスト作用を2つのアッセイ系を用いてスクリーニングを行った。アゴニスト作用はluciferaseを用いたreporter gene assayを行った。

このアッセイではXREの下流にluciferase遺伝子を組み込むことで,リガンド/AhR複合体がXREに結合し,関連遺伝子の発現を誘導する程度を,luciferase活性を測定することで定量化し,2,3,4,8-TCDDとそれぞれのポリフェノールを比較した。またアンタゴニスト作用はAhR/XRE複合体を認識する抗体を用いてELISA法で測定した。このアッセイでは一定量のTCDDをそれぞれのポリフェノールとともにAhR, XREを含む溶液に加え,AhR/XRE複合体の濃度を測定することで,ポリフェノールがTCDDとAhR, XREとの結合を阻害する程度を定量化した。

100種類余りのポリフェノールがスクリーニングされ,isoflavone類のdaidzein, glycitein, genistein,flavanone類のnaringenin, hesperetin, flavone類のbaicalein, baicalin, chrysin,そのほかresveratrolがTCDDに匹敵する強いAhRに対するアゴニスト作用を示した。一方flavone類のapigenin, luteolin, baicalein, chrysin,flavonol類のquercetin, kaempferol, myricetin, morin, spiraeside,flavanone類のnaringenin, hesperetin,anthraquinone類のemodin, alizarin,そのほかcurcumin, resveratrol, coumestrolが強いアンタゴニスト作用を示した。ポリフェノールの一部はダイオキシン類のAhRへの結合を競合的に阻害することで、ダイオキシン類の毒性を軽減する可能性があることが示唆された。

2009/03/02 内 博史

Key words:

  • ポリフェノール:分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ植物成分の総称。フラボノイド,タンニン,リグニンなどに分類され、フラボノイドはさらにflavonol, flavone, catechin, flavanone, isoflavoneなどに分類される。
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