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Control of Treg and TH17 cell differentiation by the aryl hydrocarbon receptor

Francisco J. Quintana et al.
Nature 2008 May 1;453:65-72.

Foxp3を発現する制御性T細胞(Treg細胞)は、免疫システムにおける自己免疫反応をコントロールしていると考えられている。Treg細胞の分化は、IL-17を産生する炎症前駆細胞であるTh17細胞と相互に関係している。

Treg細胞の機能障害や Th17の調節障害は自己免疫疾患発症の一因と考えられるが、これらの細胞における分化をコントロールする生理学的な経路についてはほとんど知られていない。そこでこの論文では、リガンド依存性の転写因子であるaryl hydrocarbon receptor (AhR)をマウスにおけるTreg細胞とTh17細胞の分化のregulatorとして同定した。

このAhRのリガンドの一つである2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinによるAhRの活性化はTreg細胞を誘導して、実験的自己免疫性脳脊髄炎を抑制した。また一方、6-formylindolo[3,2-b]carbazoleによるAhRの活性化はTreg細胞の分化を抑制、Th17の分化を促進し、これにより実験的自己免疫性脳脊髄炎が重篤化した。

このように、AhRはリガンド特異的な方法でTreg細胞とTh17細胞の分化を制御し、免疫制御療法における1つのターゲットになると考えられる。

抄訳:穐山雄一郎 (平成20年10月31日)

Key words:

  • aryl hydrocarbon receptor(AhR;アリル炭化水素受容体):ダイオキシン類の毒性を仲介する細胞内受容体
  • 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (2,3,7,8-TCDD):最も強い急性毒性を有するダイオキシン
  • 6-formylindolo[3,2-b]carbazole:必須アミノ酸であるトリプトファンの紫外線分解産物の一つ。AhRの内因性リガンドと考えられている。
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